調剤薬局チェーンのオオノ(大野武・代表取締役社長)と東北大学の研究チームは、黒胡椒精油由来の「嚥下障害改善剤」について特許登録を終え、製品開発を進めている。東北大学医学部の海老原孝枝氏らが中心になって、黒胡椒の嚥下能力に及ぼす作用について研究してきたもので、黒胡椒精油を毎食前に嗅ぐことによって、嚥下能力の改善が図られるとの研究結果が得られている。
海老原氏らの研究によると、胡椒の香りを嗅ぐと嚥下に関係する脳の特定領域の血流が増加し嚥下反射や嚥下運動を改善することが分かった。高齢者では細菌性肺炎ばかりでなく、誤嚥性肺炎もかなり多くを占めている。特に、脳血管障害など基礎疾患を抱えているケースでは、誤嚥の予防が重要。食品として使用されている胡椒で予防できれば意義は大きい。研究成果は、近く「アメリカ老年医学会誌」に掲載される。
海老原氏らは、黒胡椒精油の嚥下能力改善作用が、唾液分泌ばかりでなく、嚥下に関係する脳の領域にも作用しているのではないかとの仮説を立て、脳血流の検査を行った。その結果、嚥下に関係する脳領域の血流量が増えていることが確認された。
研究は東北大学医学部老年内科が中心になり、入所者の半数以上が脳血管障害などにより嚥下能力低下が認められている宮城県内の老人保健施設で行われた。平均年齢85歳の男女入居者105人を三つのグループに分け、それぞれ1カ月間、毎食前に黒胡椒精油、ラベンダー精油、水の臭いを嗅いでもらい、食べ物を口に入れてから、嚥下反射が起こるまでの時間を調べた。その結果、実験前は平均15017秒だったものが、黒胡椒精油のグループは平均約4秒と大幅に改善されることが見出されたという。
共同研究を行ってきたオオノでは、黒胡椒精油由来の嚥下障害改善剤としての特許登録を、今年1月27日に終えている。特許権者は東北テクノアーチとオオノ。特許登録されたのは、「ブラックペッパー精油を有効成分を経鼻吸入形態にて適用される嚥下障害改善剤」で、製品については現在開発中としている。