従来からの主張が繰り返された
厚生労働省は3月31日、「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」(座長:井村伸正北里大学名誉教授)に議論すべき課題を整理した論点を提示した。会議では、三木谷浩史委員(楽天代表取締役会長兼社長)の要望に応じ、次回、薬局や店舗で医薬品の購入が困難な場合の実情を知るため、消費者からヒアリングを行うことは決まったが、対面販売原則派と規制撤廃派による従来からの主張の繰り返しに多くの時間が費やされ、論点に沿った議論は進まなかった。
論点は、▽薬局・店舗などでは医薬品の購入が困難な場合の対応策▽インターネットなどを通じた医薬品販売のあり方――で構成。
困難な場合の対応方策の論点としては、購入困難者が、どの程度ネット販売等を利用しているかの実情を探るヒアリング実施を挙げた。そのほか、▽家族、介護事業者などの支援による対面販売▽配置販売▽注文・取り寄せ販売””の実効性の担保なども挙げた。
また、伝統薬の販売方法については、電話など具体的な販売方法の把握や、全国の薬局・店舗などが取り寄せることで、購入が困難な状況が解消されるのかを検討課題とした。
ネット販売では、▽販売の場を提供している業者の責務▽個人認証▽購入者・販売業者双方のコミュニケケーション▽購入後の相談対応▽副作用方向への対応▽情報提供の確認▽過剰購入・大量購入の防止策――などが挙がっている。
会議では、楽天や日本オンラインドラッグ協会などが、省令が施行されれば、消費者の利便性が損なわれるだけでなく、通信販売も営んでいる薬局の経営状態も悪化する事例を紹介し、省令の再改正を求めた。対面販売原則派は、安全性が第一だと主張。日本チェーンドラッグストア協会、日本置き薬協会が提出した意見書では、検討会そのものの中止を求めるなど、双方の主張の繰り返しに時間がとられ、溝は深まった。
今地政美委員(福岡県保健医療介護部薬務課長)は、施行が6月に迫る中、「どこまで議論するのか、今後のスケジュールが知りたい」と述べ、制度を周知するための時間がなくなることに危機感を示した。増山ゆかり委員(全国薬害被害者団体連絡協議会)も、「一歩も足を踏み出していない」と議論が進んでいないことを問題視した。
議論を進めるため、井村座長は、三木谷委員が再三にわたって主張している「エンドユーザーの声を聞くことが大事」との要望に応じることを提案、了承された。
ただ、ヒアリングの対象者については、倉田雅子委員(納得して医療を選ぶ会)が「偏りのないように」と要望。これに対し井村座長は「いろいろな立場の人を呼び、意見を伺うことになるだろう」と述べた。
会議終了後、井村座長は今後のスケジュールについて「見込みが立てられる状況ではない」と述べ、必ずしも6月の完全施行を視野に入れていないと説明。厚労省も「6月に間に合わせるために議論を急ぐことはない」としている。