日本新薬は、新しい創薬技術として研究を進めてきたRNA干渉(RNAi)を応用して医薬品化するために必要なDDS(薬物送達システム)や合成法といった独自技術を事業化し、他社に提供する方向で検討に着手した。専門組織で2006年度末までに、研究段階にあるRNAiを応用した抗癌剤などの医薬品開発も含め、事業方針を固めることにしている。
RNAiは、二本鎖RNAと相補的な塩基配列を持ったmRNAが分解される現象。RNAi法は、この現象を利用して人工的に二本鎖RNAを導入することによって、任意の遺伝子の発現を抑制する手法で、癌や感染症治療への応用が期待されている。ただ、RNAをいかに化学合成し、標的までいかに運ぶか(DDS)が課題となっている。
同社では、これまでの腫瘍細胞株や動物実験(マウスなどへの局所投与)を通して、21023塩基の短い「siRNA」をカチオニックリポソームに組み込んだ複合体を開発。まだ臨床試験入りのメドは立っていないが、現在、化学修飾などによる最適化に向けた研究を進めている。合成についても、独自の「CEMアミダイト」による技術を開発し、従来の合成法より純度と収率を高めたという。
それらの成果を踏まえて06度末までには、探索段階から非臨床試験に対応できるGLP対応のパイロットプラントを完成させ、外部にも提供できる体制を整える方向で、取り組んでいる。製造コストの抑え込みも図る方針だ。
また、81塩基の長さを持つ一本鎖RNA(miRNA)の合成にも成功したという。miRNAはヘアピン構造のRNA分子からDicerにより切り出される一本鎖の短いRNAで、発生過程の遺伝子発現制御などを行っていることが明らかにされつつある。
技術が固まってきていることから、同社は4月、技術の確立を進めるためつくば市の東部創薬研究所に「核酸研究部」、事業化の検討を行うため本社に「核酸事業室」を新設した。事業室では1年かけ、これまで蓄積した技術に対するニーズなどを探り、事業化の方向性を検討するほか、RNAiを応用した抗癌剤の開発について共同開発の可能性を探る。