田辺三菱製薬は24日、遺伝子組み換え人血清アルブミン製剤「メドウェイ注5%」の製造承認を取り下げると同時に、「メドウェイ注5%」「同25%」を自主回収すると発表した。05年に実施した「同5%」の実生産バリデーションで、ラットPCA反応試験データの差し替え事実が判明したことによるもの。これにより両剤とも出荷停止となるが、「同25%」については、「同5%」のようなデータ差し替えの事実が確認されていないため、出荷再開に向けて当局と検討を重ねて行く。実生産バリデーションによる製造品は市場へは出荷しておらず、販売開始以降に出荷した製造品は、規格に適合していることを確認しており、品質への影響はなく、健康被害の報告はないとしている。
「メドウェイ注5%」「同25%」は、田辺三菱製薬と子会社のバイファが共同開発した製品で、2007年10月に製造販売承認を取得。バイファが製造し、昨年5月から田辺三菱製薬が販売を開始した。当初3年間は、1万例の使用成績調査を行う販売体制が取られている。
発表によると、昨年末、バイファから「メドウェイ注5%」の有効期間延長のための承認事項一部変更承認申請(一変申請)について、試験データの差し替え行為に関する報告があり、追加試験を行った結果、その事実を確認したため、1月26日に一変申請を取り下げた。
それを契機に、他の試験項目を含めてバイファ及び田辺三菱製薬で詳細な調査を行った結果、「メドウェイ注5%」の製造承認取得に係る医薬品のGMP調査のための実生産バリデーション(05年実施)で、ラットでアレルギー反応を調べるラットPCA反応試験に関して、試験データの差し替えが行われていた事実が判明。「同5%」の製造承認を取り下げると同時に自主回収に踏み切った。
データ差し替えの具体的な内容は、ラットPCA反応試験3ロットのうち、1ロットに陽性反応が出たにもかかわらず、3ロットとも陰性としたもの。
「同25%」については、「同5%」と同様の違反行為は確認されていないものの、同一製造所で同一時期に実生産バリデーションが実施された製剤のため、自主回収措置をとった。
田辺三菱製薬では、「原因の追求並びに問題点の改善に尽力し、法令順守の徹底、品質保証体制の見直しを図りたい」としている。
「同5%」は、やけど、出血性ショックなどの外科分野で、「同25%」は肝硬変などの消化器内科で使用されている。昨年5月から今年2月までの売上比率は「同5%」15%に対し、「同25%」が85%と、消化器内科での使用比率が圧倒的に高い。
厚生労働省では既に、アルブミン製剤について「13年をメドに遺伝子組換えアルブミンも含めて国内自給達成を目指したい」との政策を打ち出しているため、「同25%」の今後の動向が注目される。