医薬品新販売制度の円滑施行に関する
検討会
「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」(座長:井村伸正北里大学名誉教授)は12日、インターネットを含む一般薬の通信販売のあり方について議論した。対面販売原則派と規制撤廃派が従来からの主張を繰り返し、議論は平行線をたどると思われたが、複数の委員から、「ネットがいけないと言っているわけではない」「ネット販売の安全性については、別の場で議論すべき」など、ネット販売の新たな検討会設置に含みを持たす発言が相次ぎ、新たな展開を見せた。
会議では、後藤玄利委員(日本オンラインドラッグ協会)が、業界が独自に作成したネット販売の安全確保ルールについて説明。添付文書を表示した上で、顧客が既往歴などの質問に答えなければ購入できないようにすることや、一度に購入できる医薬品の数量を制限し、同一顧客による同一日内の複数回注文もチェックできるような対策を講じることができるとした。
また三木谷浩史委員(楽天)は、全国で約850万人がネットで医薬品を購入している現状を示し、「医薬品の通信販売は多くの人に指示されるライフライン」と主張した。
一方、児玉孝委員(日本薬剤師会長)は、薬局や一般販売業、薬種商販売業の存在しない町村が全国に95カ所あるとの調査結果を示した上で、居住地の近くに薬局や薬店がなくても配置販売業者を通じてOTC薬は供給できると説明。また、自ら薬局や薬店に買いに行けない場合でも、購入を依頼された家族、親戚などが使用者の状態を伝え、対面で情報提供を受ければ購入できるとした。
さらに児玉委員は、ネット業界が示したルールに対し、医薬品の購入が不要と判断されるケースなどで、「購入者と対面で話をせず、購入を止めるよう説得することができるのか」と疑問を呈した。他の委員からは、「購入者の個人認証が可能か」など、“なりすまし”による購入を危惧する意見が出た。
規制の賛否をめぐり、各委員が従来からの主張を繰り返し、前回の会議同様に意見の対立で終始するかと思われたが、ネットの有用性を認める発言や、ネットの安全性の議論は切り離して行うべきとの意見も出て、進展をみせた。
北史男委員(日本OTC医薬品協会医薬品販売制度対応協議会委員長)は、「情報は提供したからいいというものではない。きちんと咀嚼をして、理解をするということが大事」と述べ、対面販売では情報提供の双方向性が大事との認識を示した上で、「そうした安全性が担保できるのであればインターネットでもいいと思う」との考えを示した。
ただ、「6月施行というスケジュールの中、この場で議論するには時間的なゆとりがない」ともし、ネット販売の安全性については、「別の機会に慎重に話し合うべき」と述べた。
望月眞弓委員(慶應義塾大学薬学部教授)は、ネットでは情報提供の双方向性や“なりすまし”の点で「疑問がある」としながら、「ネットでも安全な仕組みが構築できるのであれば前向きに検討していくべきで、別途、議論が必要」との考えを示した。
倉田雅子委員(納得して医療を選ぶ会)も、「インターネットがいけないとは思っていない。安全性の確保にはもう少し工夫が必要な点はあるが、活用できるのでは」とネットの有用性に理解を示した。