医薬品のインターネット販売問題が、いよいよ“本丸”で検討されることになった。これまでは、規制改革会議での出口の見えない議論、また関係団体、企業などが単独あるいは共同で声明を発したり、関係省庁に要望するなど、見ていると、やや感情が先走り、場外乱闘気味という感があった。
こうした状況を収めるため,舛添要一厚生労働相が働きかけ,「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」を設置。24日の初会合では“規制派”と“規制反対派”とが、初めて一堂に会した。
6月1日から施行される改正薬事法に関しては、今月6日に新制度の運用を示す関係省令が公布された。この中で、インターネットなど通信による医薬品販売は第3類薬に限定され、“ネット事業者”のほか,伝統薬の業界からも、意味合いは違うとは思うが、大きな不満が寄せられている。
検討会の設置は、これ以上場外乱闘を続けるより、ネット販売規制反対派を論議の場に着かせ、オープンな討議を通じて国民的な議論に発展させ、世論の方向性も探りたいという,舛添厚労相の思惑があったのかもしれない。
初会合であいさつした舛添厚労相は、ネット販売が利用されている現実を踏まえ、「安全確保を第一にした上で、国民に安全に医薬品を届けるにはどうすればいいか。それを実現するための一つのよすがとしたい」と述べた。至極当たり前のことであり、この言葉自体に「色」はない。決して薬剤師寄りとは捉えるべきではなかろう。時代の趨勢に従い、ネット販売も薬局や店舗販売業と同様に,一つの販売ルートとして確立してもよいともとれる。
検討会の構成員メンバーは、ほとんどが関係団体等の代表と学識経験者だが、規制反対派の中では社長が直々に、それも急きょ交代して構成員になるなど、通常とは異なるものとなった。初会合では、メンバー構成に異論が出るなど、かなりバラエティ豊かな“論争”が繰り広げられ、やや感情的な場面もあった。誰のための論議かを再認識し、より客観的な論議が求められよう。
検討会は議論の前提を当然、安全確保を第一にしており、改正薬事法の施行とも相まって、適切な「対面販売」と「情報提供」ということがキーワードになろう。
かつて、一部の医薬品が医薬部外品に移行する際の議論で、同じキーワードが使われたと記憶している。このキーワードを崩したのは、「実際には薬剤師がいないじゃないか」「説明なんて受けてない」等々、新販売制度検討の前提となった言葉だった。
薬局の運営を振り返れば、この20年は「処方せん調剤」まっしぐらで、振り返る余裕もなく走ってきた。その結果がこれらの指摘といえる。もちろん、一部地域や地元密着型の薬局では、一般薬、衛生材料等も品揃えしている。患者の背景を踏まえた情報提供も,当たり前というところもある。しかし、それが表にはなかなか見えてこない。
対面販売が原則としながらも、結果としては6月以降、“ネット販売”は「第3類薬」は死守。事実上、ネット販売の道は確保したのだ。規制反対派にとっては、さらに法制上でより高次をという「攻める立場」にある。検討会で大切なことは、冷静かつ客観的に患者・消費者に有益な結論を導く論議であろう。
その一方で、心配になるのは6月以降の各薬局・薬剤師の“体制”だ。中央で、いかに法令遵守、職能をアピールしても“刃こぼれ”はあろう。数例でも見映えの悪い実態があれば、非難の格好の材料になる。ネット販売の問題が、いつの間にやら、薬局・薬剤師の存在意義に置き換わらないよう、プロとしての所作が望まれる。