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医療費支払いに不安86%‐日本医療政策機構が世論調査

2009年02月23日 (月)

“後期”制度は、70歳以上で高い支持

 不況や雇用問題を背景にして、医療費の支払いに対する不安を抱えている人が86%にも上り、特に若者を中心に広がっている。日本医療政策機構が19日に公表した医療についての世論調査結果で明らかになった。また調査では、昨年4月にスタートし、年金からの天引きなど厳しい批判を浴びた後期高齢者医療制度に関し、70歳以上の人たちの半数以上が、現行制度に理解を示していることも分かった。

経済・雇用情勢反映し、若者中心に不安を抱く

図:現在の医療制度への満足度[PDF]

 世論調査は、同機構が国民が求める医療制度や、その根幹となる設計理念を明らかにするため、2006年から行っているもので、今年は特に、総選挙年であることや、経済・雇用情勢の急速な悪化を踏まえ、▽国民が考える医療政策の緊急課題▽医療に対する満足度や不安▽制度選択を含む医療費財源や国民の価値観の現状▽これら全ての基盤となる信頼度――などを重点に調べた。全国の20歳以上の男女1061人からの回答をもとにしている。

 医療制度についての全般的な満足度は,「まあ満足」「大いに満足」を合わせて55%と過半数を超えたが、「医療制度をつくる過程の透明さ」「制度への国民の声の反映度合い」では、いずれも8割以上が不満と感じていた。

 また、全般的な満足度は60歳代で66%、70歳代で70%が満足と回答し、他の年代を大きく上回った。個人が支払う医療費については、30040歳代の子育て世代の7割が不満を持っているの対し、70歳以上では6割近くが満足と回答するなど、世代間に格差が見られた。

 一方、医療に対する不安は、「必要なときによい医療を受けられない」(80%)、「深刻な病気に罹った時に医療費を払えない」(86%)、「医療ミスに合う」(83%)のいずれの項目でも、2年前の調査結果を大きく上回った。中でも、「深刻な病気に罹った時に医療費を払えない」は、2年前と比べて14ポイントも増加しており、国民の間で医療費の支払いに対する不安が高まっていることが明らかとなった。

 また、医療費に対する不安について「非常に不安」と答えた割合は、20歳代、30歳代などの若い年代ほど高い傾向にあり、職業別にみると「非正規雇用」で最も高かった。

 同機構では、一般的に不安の度合いを尋ねる質問では,「不安」が高い率で回答される傾向があることや、日本人は他国と比較して「不満」「不安」などと回答する傾向があることが知られているため、結果の解釈は慎重に行う必要があるものの、「最近の厳しい雇用・経済情勢などの世相を色濃く反映し、若者を中心に医療費に対する不安が広がっていることが示唆された」としている。

 「限られた医療資源を配分する際、どの分野を最も優先するべきか」の問いでは、「救急医療」と「産科・小児科医療」が突出して高く、次に高齢者医療が続いた。

 自由記述コメントでも、「救急のたらい回しは、緊急に解決すべき」といった救急医療に対するコメントが目立ったほか、「少子化と言っているわりに、妊婦救急をたらい回しで死亡させたり、小児科医が減ったりしている。人口が増えるように、産科や小児科などを充実すべきだと思う」など、産科・小児科医療の問題と少子化対策を関連づけた上で,早急な対策を求める声が目立っていた。

“後期”見直しは4割

図:後期高齢者医療制度を今後どのようにすべきか[PDF]

 昨年4月の制度スタート直後から、激しい批判に晒された後期高齢者医療制度に関しては、「現行の制度のまま維持」(9%)、「細かな点を修正し、現行の制度の骨格を維持」(4%)を合わせ、現行制度または制度の微修正を打ち出す政府・与党方針を国民の約半数が支持していることが明らかとなった。

 これを年代別に見ると、70歳代以上では56%の過半数が、政府・与党方針を支持しており、他の年代と比べて最多の支持となり、同制度の当事者である高齢者世代が比較的落ち着いた反応を見せている傾向が明らかになった。

 一方、「廃止して,元の医療制度に戻す」(29%)、「元の医療制度でも現行の制度でもない,全く新しい制度をつくる」(14%)と、後期高齢者医療制度の見直しを求める声も合わせて42%に上った。

 後期高齢者医療制度の印象を聞くと、50歳代の7割近くが悪い印象を持っていた。20歳代、30歳代の5割以上、40歳代では6割近くが悪い印象を持っていた。

医師不足は6割が痛感、しかし税での負担増は反対

図:身近な環境での医師数は十分だと感じるか[PDF]

 医師不足については、国民の59%が身近な環境で医師不足を感じており、昨年までと同様の傾向を示した。自由記述のコメントからも、救急、産科・小児医療同様に,医師不足についても対策を求める声が多く寄せられていた。

 しかし、これらの解決のための負担増の是非について、「医療従事者の数を増やすために、税金や保険料、窓口で払う医療費等、負担を増やしてもよいか」と聞くと、「反対」「どちらかといえば反対」を合わせ、国民の68%が反対した。

 その理由としては、「足りないから値上げをして国民の負担を増やすのではなく、その前に税金の使い方を再考して無駄をなくすことが先決」などと、例年通り、政府の無駄遣いや使途の不明瞭さを指摘する意見が目立った。

 ただ、負担増に賛成した意見の中には、▽医療従事者の数を増やし,ゆとりある治療ができれば,多少の負担増はやむを得ない▽救急医療のたらい回しは緊急に解決すべき▽将来の高齢社会を思うと,いまのうちに医療従事者を増やしておかなければならない――など、冷静な判断をする人たちもいた。

 負担増反対では、▽生活が苦しいので、これ以上負担できない▽従事者の数を増やすためにというのはよく分かるが、実際、窓口での支払いが増えるのは苦しい▽高齢であり今後ますます医療機関にかかる回数が増えると思うので、これ以上負担が増えるのは老後の生活を考える上で,とても不安――などがあった。

 社会保障目的の消費税増税については59%、医療費目的のたばこ税増税については64%が賛成していた。たばこの値上げ幅に関して、一箱4000600円にするとの回答が6割以上を占め、1000円以上も25%もあった。

 消費税現行維持の意見としては、▽景気も悪化し、個人所得も減少傾向にあるのに、足りないから増税というのは賛成できない▽消費税の前に是正すべき点はもっとある▽消費税の使い道が見えない――などがあった。増税やむなしでは、▽諸外国と比較し,まだ日本は安い方▽消費税で全て賄えば貧富の差がないと思う▽一般庶民が安心して暮らせるならやむを得ない――などの意見があった。

 こうした結果について同機構は、「医師不足やそれに伴う救急医療、産科・小児科医療などの問題や医療従事者が置かれた厳しい状況に対する国民の理解が進んでいることがうかがえた」とすると共に、「生活の苦しさ、負担増の厳しを訴える声が増加しており、ここでも最近の雇用・経済情勢を色濃く反映しているものと考えられる」としている。

高い薬剤師への信頼感

 一方、年金・医療・介護などの社会保障は、基本的に信頼に基づく相互扶助の理念に支えられている。このような背景から、国民が持つ医療関係者や組織に対する「信頼感」について、今回、初めて調査を行った。

 上位には、▽薬剤師▽看護師▽医師――と、医療従事者がいずれも約90%で並び、国民から極めて高い信頼を得ていることが明らかとなった。続いて、「病院・診療所」(83%)、「患者団体」(68%)が上位に並んだ。

 最下位は「政党・国会議員」で、国民の84%が「信頼できない」「あまり信頼できない」と答えた。厚生労働省も国民の78%が信頼できないと回答した。

 コメントでも、政府や政治に対する厳しいコメントが多数寄せられた。マスメディアに対しても59%が信頼できないと答えた。

 なお,同機構では、一般的にこの種の信頼度調査では、組織・団体よりも個人が高い信頼を得る傾向があること、また身近に存在する人や組織の方がより高い信頼を得る傾向があることから、結果の解釈には注意が必要だが、国民が政府や政治に対して,極めて大きな不信感を持っていることが浮き彫りとなったとしている。しかし、「国民は医療従事者に高い信頼を寄せており、今後の医療改革における医療従事者の役割を考える上で,示唆に富む結果となった」と見ている。

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