都内で開かれたキックオフシンポジウム
NEDOプロジェクト「マイクロドーズ臨床試験を活用した革新的創薬技術の開発」のキックオフシンポジウムが21日、都内で開かれた。製薬企業の立場から講演した田辺三菱製薬開発本部プロジェクト統括部の山田一磨呂氏は、「製薬企業コンソーシアム」参加企業のアンケート結果を報告した。その結果では、マイクロドーズ(MD)試験に期待が示される一方、インフラ整備を要望する声が多かったことから、山田氏は「まだ企業は、MD試験を実施したいが、よく分からないというのが現状ではないか」と分析した。
アンケート調査は、製薬企業コンソーシアムに参加する14社中12社から回答を得た。それによると、12社のうちMD試験の実施経験がある企業は1社にとどまった。2011年(NEDOプロジェクト終了時)までの実施予定は1社、予定なしが1社、未定が7社との結果で、現状で製薬企業は、MD試験のメリットを図りかねている状況が浮かび上がった。
アンケートで、MD試験を活用した高精度な体内動態予測技術の開発への期待を尋ねたところ、「企業が国内で実施しやすい治験環境の整備」「MDと臨床用量の比較」「MD試験の限界」などを求める声が多かった。また、PETを用いたMD分子イメージングに基づく有効性・安全性評価技術の開発への期待を見ると、「新規プローブの開発と標準的手法の開発」「MD試験のメリットと限界」「インフラ整備」など、同様の回答が多かった。
さらに、MD試験を活用した臨床研究に対しては、「MD試験の限界」「倫理面を含むインフラ整備」「反復投与試験の予測」が挙げられ、併せてMD試験を一括して実施できるCROの存在を望む声も多かった。これらの結果を受け、山田氏は「インフラ整備を求める声が多かったのは、製薬企業はMD試験を実施したいが、まだよく分からないということの表れではないか」と述べた。
その上で、NEDOプロジェクトに対して、「POCぐらいまでの予測性をプロトコールに盛り込めるぐらいのデータを出してほしい」と期待感を表明。「プロジェクトの成果をコンソーシアムにフィードバックして、うまく企業との融合を図っていきたい」と実用化への意欲を語った。
ただ、会場からは、製薬企業の立場として、「候補化合物の特許が確定してしまった段階で、MD試験を実施しても遅すぎる」といった声も挙がり、リード化合物の選定時など、創薬研究の早期段階でMD試験を実施すれば企業のメリットになるとの意見も出た。今後、MD試験の実施時期に関しては、さらなる検討課題となりそうだ。