望月理事長
東京薬科大学、星薬科大学、昭和薬科大学、日本大学薬学部の老舗4校が、調整機構を介さず、独自に確保した実習先で実習を行う態度を鮮明にしたことについて、薬学教育協議会の望月正隆理事長(東京理科大学教授)は「モラルが問われる」と痛烈に批判。全ての関係者共通の目標は、「よりよい薬剤師の養成」に尽きるとし、そのために「今は小異を捨てて大同につくとき」と呼びかけた。4大学の合計学生数はおよそ1000人に上り、関東地区調整機構が受け持つ学生の、実に5分の1に当たる。本紙の取材に答えたもの。
調整機構を通じて実務実習を行う大学は、実習を希望する学生のリストを提出しなければならないが、東京薬大、星薬大、昭和薬大、日大薬学部の4校はいずれもこのリスト提出を行わず、実質的にそれぞれの大学で独自の実習先を確保する姿勢を明らかにした。
6年制教育における長期実務実習の実現を目指して、共にワークショップや指導薬剤師育成など、長い道のりを歩んできた者同士の造反ともとれる行為に対し、望月氏は「モラルを問われる」と厳しく批判。「大学独自のカリキュラムを生かすため、やむを得ない措置だと説明する大学もあるが、そうした勝手な行為をした結果の実習で、どれほどよい実習が保障できるのだろうか」と疑問を呈した。
望月氏によれば、各大学の調整機構に対する不満の最大は、調整機構を介した実習では、最後まで学生が具体的にどの薬局で実習をするかが分からない点にあるという。それに対し、望月氏は「他のブロックならともかく、関東は膨大な学生を実習させなければならない。個別の条件まで聞いていると、とても5000人規模の実習は実現できないだろう。その分、指導薬剤師育成やワークショップ、1薬局2人までの学生受け入れなどの縛りをかけることで、どこの薬局にいっても同じ質の実習が受けられるように、質の均一化に最大限の気を遣った」と説明する。
関東では、受け入れ薬局側も、実習する学生側も、互いにどのような薬局でどのような学生が来るかは、実際にスタートするまで分からない。それによる不安を解消するため“エリア制”を敷き、「このエリアにはこういった薬局があるという情報を示すことで対応している」。エリアごとの薬局情報は、各薬剤師会や病院薬剤師会のホームページから参照することができる。また、同一エリア内で、どの学生をどの薬局に割り振るかは、「純粋に学生が通う際の地理的条件で決めている」という。
望月氏は、「(独自の実習先確保が)果たしてよいことか悪いことかは分からない。しかし、これまで長い間、よい薬剤師を育てるために自分たちで調整し、自分たちで実習するように力を結集してきた。薬学全体のために、今は小異を捨てて大同についてほしい。3年後には新しい教育を受けたよい薬剤師が出てくる。ケンカはその後、ゆっくりしよう」と全ての関係者に呼びかけた。
【お詫びと訂正】
記事中で、東京薬科大学、星薬科大学、昭和薬科大学、日本大学薬学部の4校が独自に実習先を確保したのは、薬局実習に限ったことで、病院実習はこの限りでありません。また、4校は調整機構を離脱するものではありませんでした。お詫びして訂正します。