抗ヒスタミン薬を服用し、無自覚なまま集中力や判断力、作業能率が低下してしまう状態「インペアード・パフォーマンス」(気づきにくい能力ダウン)の認知・啓発を目的とする「インペアード・パフォーマンス・ゼロプロジェクト」が15日に発足した。本格的な花粉症シーズンに向け、能力低下が事故につながる恐れのある職業ドライバーや高いパフォーマンスが求められる受験生の啓発に取り組んでいく。
インペアード・パフォーマンスは、自動車の運転や飛行機の操縦などで事故につながりかねない危険性をはらんでいるほか、企業の生産効率も低下させる。また、日常生活全般の様々な場面で不都合を生じさせる可能性があるにもかかわらず、その社会的認知は進んでいないのが現状だ。
実際、花粉症のビジネスマンや花粉症治療薬を服用する職業ドライバー、会社経営者を対象に、調査会社のマクロミルがインターネット調査を行ったところ、インペアード・パフォーマンスという言葉の詳しい内容を「知っている」は、経営者・ビジネスマンとも0・7%と、ほとんど認知されていないことが浮き彫りになっている。
その反面、インペアード・パフォーマンスの意味を説明し、「引き起こしにくい花粉症治療薬があれば、使用させたい・使用したいか」を聞いたところでは、経営者・ビジネスマンとも8割以上が「使用したい」と回答。インペアード・パフォーマンス啓発の必要性が明らかになっている。
インペアード・パフォーマンスで問題が大きいのは人身事故につながるドライバー対策。花粉症治療薬を服用している職業ドライバー309人に対する調査結果では、「眠気・だるさを感じた」が50・5%、「集中力・判断力の低下を感じた」が36・2%、それ以外の「何らかのパフォーマンス低下を感じた」が13・3%と、ほとんどのドライバーがインペアード・パフォーマンスを感じていることが明らかになっている。
しかし、「花粉症の薬を使用した状態で仕事をするか」との問いには、92・9%が「する」と回答。パフォーマンスの低下を懸念しつつも仕事をしている現状が浮かび上がっている。特に、花粉症治療薬が「眠気」を引き起こすことについては半数強が知っていたが、だからといって花粉症治療薬に注意を払っている人は3割強しかなく、「眠気はなくとも判断力や集中力の低下を生じるものがある」ことを知っていたの半数強しかなかった。
ドライバーばかりでなく、アレルギー性鼻炎で通院した経験のある患者とその保護者を対象にしたアンケート調査でも、抗ヒスタミン薬の種類によって、服用後の「作業効率の低下」に違いのあることを知っていたのは、27・1%で、「学習への支障」に違いのあることを知っていたのはわずか25・6%だった。
「インペアード・パフォーマンス・ゼロプロジェクト」は、そうした現状を踏まえて、インペアード・パフォーマンスの啓発・適切な花粉症の治療を広く社会に呼びかけようと設立された。協賛企業としてサノフィ・アベンティス、賛同企業/団体として宇佐美鉱油、栄光、信州・長野県観光協会、中日本高速道路、ハロー・トーキョーが参画している。
このうち栄光ゼミナールでは、生徒とその保護者に対し、適切な治療法を紹介する小冊子を配布する。信州・長野県観光協会は、車でスキーに訪れる顧客に対し、共同小冊子と啓発ポスターをツールにインペアード・パフォーマンスの訴求に協力する。共同小冊子は、中日本高速道路のサービスエリアでも配られる。宇佐美鉱油はサービスステーションでドライバーに向けて啓発チラシを配布し、啓発ポスターを貼付する。ハロー・トーキョーは、同社のタクシー運転手全員に啓発セミナーを実施し、安全運転のために花粉症治療の正しい知識を修得した証として全てのタクシーにインペアード・パフォーマンス・ゼロプロジェクトのステッカーを貼る。また、タクシーの中に、啓発カードを設置し、一般の乗客への啓発を行う。サノフィ・アベンティスは、インペアード・パフォーマンスの正しい認知・理解と適切な花粉症の治療を啓発するためにウェブサイト「アレルギーi」(http://www.allergy-i.jp/)などを通じて情報を発信する。