クール氏
国際科学技術財団(理事長吉川弘之氏)は15日、2009年(第25回)日本国際賞受賞者2人を発表した。今年の授賞対象となった「医学・工学の融合における疾患への技術の展開」分野では、ミシガン大学放射線医学のデビット・クール教授が、核医学における断層イメージングの開発に貢献したことが評価された。
クール氏は、「核医学的断層撮影の父」とし、今日の発展の道を開いた。クール氏は1950年代に、体内に注入した放射性同位元素の分布を断層撮影する開発実験を、世界に先駆けて開発。その後、SPECを開発して生体における体軸横断撮影を世界で初めて可能にした。この撮影法の成功は、X線CT開発よりも早く、その技術は陽電子放出断層撮影(PET)などを含めた、様々なコンピュータ断層法の開発に大きな影響を与えた。
また、70年代には、自ら開発した放射性同位元素による脳の再構成断層画像を用い、局所脳血液量を測定、初めて生体の生理機能を3次元的に測定し、脳生理学、神経科学、行動科学などの核医学への道を開いた。
受賞に当たりクール氏は、「分子画像は、患者の身体を傷つけることなく、新薬や個々の体質にあった治療を開発する鍵となる。また、より多様な情報を提供することで、医療に対して今より遙かに大きなインパクトを与えるようになると期待している」とコメントを寄せている。
もう1人の受賞者は、「自然と共生する持続可能な技術社会形成」分野から、ニューハンプシャー大学のデニス・メドウズ名誉教授。メドウズ氏は、「成長の限界」報告を基盤とする、持続可能な社会形成への貢献が認められた。
両氏には、4月23日に東京で開かれる授賞式で、賞状と賞牌、賞金5000万円が贈られる。
なお、10年(第26回)日本国際賞の授賞対象分野は、▽工業生産・生産技術▽生物生産・生命環境――の二つで、現在、世界各国の学者や研究者、有識者に受賞候補者の推薦を依頼している。