後会計の効率化を実現、投薬窓口にシステムを設置
|
東海エリアを中心に79薬局(2006年6月時点)を展開するたんぽぽ薬局(本社岐阜市、社長河原照忠氏)はここ数年、薬局業務のIT化に力を入れている。第1弾としてEMシステムズの後会計システムを全店舗に導入した。そのモデル店として、他店より早い段階から後会計システムを活用しているのが、たんぽぽ薬局旭店だ。システムを登載した小型ノートパソコンを投薬窓口に設置。患者と対話しながらその場で各種指導料や加算を入力すると、すぐに請求金額が表示されるため、会計業務の効率化が図れたという。
同店は、近隣の旭労災病院の院外処方せん発行本格化に伴い、02年8月に開設された。応需処方せん枚数は1日平均1300140枚。薬剤師4人、メディカルスタッフ(MS)2人という構成だ。来局者は、旭労災病院に通院する患者がほとんどで、高血圧や高脂血症、糖尿病などの慢性疾患患者が多いが、労働災害によるじん肺など呼吸器疾患の患者も比較的多いという。
|
同店には、処方せん受付窓口のほかに、衝立で仕切られた投薬窓口が二つある。その窓口に1台ずつ設置されたA5サイズのノートパソコン。後会計システムはここに登載されている。レセコンの機能のうち会計に関する部分を切り出し、独立端末でも操作できるようにしたものだ。
この窓口では、調剤、監査を経た処方薬や、薬歴、薬情などの書類を手にした薬剤師が患者と対話する。服用回数や服用時の注意点、副作用などについて話し、患者の質問に回答しながら、実際に行った各種指導料や加算を、ノートパソコンで起動させた後会計システムに入力していく仕組みだ。
パソコンの画面には、薬剤服用歴管理指導料、薬剤情報提供料など各種指導料や加算が一覧表示される。実際に算定する各項目でエンターすれば即座に、それに応じた請求金額が画面に示される。あとは、支払金額を患者に告げ、領収書発行を画面から指示するだけ。後会計の概念に基づいた会計業務を、こうした一連の動作で行えるわけだ。
このような後会計処理はレセコン本体でも可能だ。しかし、処方せん受付窓口まで移動して操作したり、事務員に指示したりする必要があり、手間がかかる。業務も非効率だ。後会計システムはこの問題を解消できる。
薬剤師が投薬窓口で患者と対話しながら、手元の端末を操作するだけで会計業務まで終えることができるのは、極めて自然な流れだ。薬剤師にとっても患者にとっても違和感がない。後会計システムは無線LANでレセコン本体とつながっている。待ち合いスペースにいる患者のところまで持ち運んでも使えるという。
操作自体も「そんなに難しいことはない。(チェックする項目の)間違いがないように注意することくらい」と同店薬局長・管理薬剤師の中山美香氏は話す。
特に新規患者の場合、投薬窓口では主に、[1]薬歴の基礎資料となるアンケートの協力を得られるか[2]お薬手帳が必要か(有料であることの同意)[3]情報提供に応じてもらえるか――という3点によって、発生する費用が変わってくる。
「算定要件を満たせない場合は、無理にこれらの費用を請求することはない」(中山氏)。患者の意志を尊重した上での後会計といえよう。
診療報酬の不適正な請求に厳しい目が向けられるようになっている。その意味からも、システム導入によって後会計の実施をはっきり示せることの意義は大きいと、たんぽぽ薬局業務企画部ゼネラルマネジャーの新井徹氏は言う。
|
同店の後会計システムはEMシステムズの「Recepty Plus+(レセプティプラス)」。同社の調剤レセプトコンピュータ「Recepty」のオプションとして機能するものだ。同一パソコンへの電子薬歴登載を想定し、WindowsXPで動作する。
たんぽぽ薬局チェーンのほぼ全ての店舗には、以前から同社のレセコンが導入されている。当初は他社のレセコンを使っていたが、アフターフォローの良さから切り替えたという。
多くの店舗ではまだ同社の前バージョンのレセコン「EMレセプティ」と、それに連動する後会計システム「EM‐α」という組み合わせが中心。数年以内に各店舗のシステムを随時「Recepty」と「Recepty Plus+」に置き換えていく予定だ。
IT化に本腰を入れるたんぽぽ薬局チェーンはこのほど、後会計システムの全店導入を終えた。次のステップとして、バーコードを活用し調剤過誤、在庫管理、発注を網羅するシステムを構築する計画だ。電子薬歴の導入も進んでいる。
「薬剤師は服薬指導をしっかりと行い、それ以外のことには余計な気を使わなくて済むようにしたい。そのため機械にできることは機械にさせたい」と新井氏。「処方せんがそうであるように、患者さん一人ひとりが薬局に求める対応もオーダーメイド」とし、薬剤師がそのオーダーを機敏に捉えて対応できるよう、IT化で支援したいと話している。