全国薬系大学・学部卒業生の就職先は1999年以来、薬局(勤務・開設等)がトップとなっているが、2008年3月卒業生では30・7%と、進路としても「進学」を抑えトップとなった。回答のあった56大学の卒業生は1万0109人と1万人の大台を突破した。薬学教育協議会がまとめた08年「薬科大学卒業生・大学院修了者就職動向調査」で明らかになったもので、今後も「薬局」への就職率は高まるのではとみられている。
就職動向調査には、56大学(国立14校、公立3校、私立39校)が回答し、前年調査より8校(私立)増加、卒業生も1万0109人(男4217人、女5892人)と、前回の8954人に比べ1155人増加した。設置主体別の卒業生は国立1192人、公立374人、私立8543人。全卒業生のうち、就職した者は6497人(64・2%)、このうち給与が判明した者は61・1%だった。
卒業生の主な進路は、[1]薬局(勤務、開設等)30・7%(前年28・1%)[2]進学28・9%(31・3%)[3]病院診療所薬局14・8%(15・0%)[4]企業8・6%(7・1%)[5]一般販売業4・7%(5・1%)[6]病院診療所研究生1・8%(2・3%)[7]衛生行政1・5%(1・1%)[8]卸売販売業0・9%(0・6%)[9]大学0・3%(0・6%)””となっている。「就職せず」と「未定」は、合わせて5・0%だった。
卒後の進路としては01年卒業生以降、前年まで「進学」がトップだったが、7年ぶりに薬局がトップになった。
男女別に見ると、女子は薬局がトップで34・1%で過去最高となり、次いで進学21・1%、病院診療所薬局18・9%、企業7・9%(うち営業5・3%)、一般販売業4・4%など。男子は進学が39・8%と最も多く、次いで企業9・4%(うち営業7・8%)、薬局25・6%、病院診療所薬局9・1%、一般販売業5・1%と続いている。
国公私立別では、国公立は男女とも進学がトップで国立男子は80・0%、公立男子72・3%、国立女子67・3%、公立女子45・3%と圧倒的だった。これに対し、私立では薬局がトップで、男子は30・4%、次いで進学が30・1%、女子は37・5%、次いで病院診療所薬局が19・6%、進学は15・4%にとどまった。
初任給は微増の23・9万円
初任給は平均23・9万円で、前年より1000円の微増にとどまった。このうち薬局勤務は25・1万円(前年比6000円増)、病院は21・2万円(4000円減)、一般販売業は28万円(同額)だった。
初任給30万円以上は、96098年の0・4%程度から、05年には9・8%に達したが、前年は6・6%で、今回は3975人中295人の7・4%だった。このうち、一般販売業は293人のうち4割近い113人、薬局では1991人の8・5%に当たる169人が30万円を超えていた。
調査結果をまとめ、薬学教育協議会では「06年度より6年制が実施され、6年制の薬剤師育成教育と4年制の創薬教育の並列実施となった。大部分の私立大学は6年一貫の薬剤師教育体制となり、大学院修士課程がなくなった。また、国立主要大学以外は6年制重視の体制をとっているため、4年制の定員数は少なく、大学院への進学者が減少する」との見方を示している。
今後の就職動向については、新卒業生が1万人台に突入したことから、薬局に230002600人、病院薬剤部に120001400人、製薬企業に5000600人と推定したものの、実際には薬局に3101人、病院薬剤部に1498人、製薬企業に868人と、いずれも予想より多かったことから、「今後も、薬局、病院薬剤部への就職が増加すると思われる」と見通している。
大学院終了者‐6年制移行で厳しい時代に
大学院修士課程・博士課程修了者(2341人、441人)の就職動向を見ると、国公立大学の修士修了者は製薬企業への就職が425人で、うち約96%が研究開発だった。私立では299人、研究開発は約86%だった。
修士修了者で薬局・病院薬剤部への就職は、国公立ではそれぞれ49人、159人、私立では106人、415人で、私立では修了者の約43%を占めた。
その今後について、薬学教育協議会では、今年の修士課程修了者2341人のうち、薬剤師免許の必要な薬局、病院薬剤部等への就職者数が729人、製薬企業への就職者が724人だったことを示し、「今年の製薬企業への就職者は4+2年制入学定員の約6割で、薬剤師免許をとれない大学院修士課程修了者の就職は困難になるだろう」と推測している。