癌性悪臭に対する院内製剤としてメトロニダゾール(MTZ)軟膏が使われているが、まだ普及は不十分で、調製方法も各施設によって統一されていないことが、聖路加国際病院薬剤部の渡部一宏氏らの調査で分かった。成績は、先に開かれた「医療薬学フォーラム2006」で発表された。
調査は日本乳癌学会認定施設のうち、診療所を除いた432施設にアンケートしたもので、313施設(回答率72.5%)から回答を得た。
進行性乳癌などによる腫瘍潰瘍部からの悪臭に対して、「院内製剤を調製している」と回答したのは95施設(30%)で、212施設(68%)は調製していなかった。処方人数は月間平均1人以下が多く、35施設であった。
費用負担としては、▽33施設が診療材料費から捻出▽25施設が自費診療として患者に請求▽32施設が薬価収載品の原料のみ保険請求――していた。
乳癌学会認定の施設を対象としたにも拘わらず、調製施設や実施患者が少なかったことについて、渡部氏は「MTZ軟膏に対する認識が足りない」とし、「院内製剤であるために保険請求ができないことも、幅広く使用されない大きな壁になっている」と報告した。
一方、MTZ軟膏の主原料としては、39施設がフラジール錠、31施設がMTZ試薬、10施設がフラジール膣坐剤を用いていた。その濃度は、10施設が0.75%、35施設が0.8%、35施設が1.0%であった。基剤原料は52施設がマクロゴール・マクロゴール軟膏、18施設が親水軟膏を使用。添加剤は2%リドカインゼリー、4%リドカイン外用液、アルギン酸ナトリウムなどを25施設が用いており、添加剤を使用していないところも55施設に上った。
これらの結果から渡部氏は「主成分、濃度、軟膏基剤、添加剤などにバラツキが見られる。各施設それぞれ試行錯誤していることが考えられる」と分析。より効果的で安価なMTZ軟膏の調製を行うためにも、基礎や臨床のデータを蓄積する必要があるとし、「より多くの癌性悪臭患者の治療やケアに、MTZ軟膏が貢献できることが望まれる」と指摘した。