全国医学部長病院長会議は、初めて新医師臨床研修制度による修了者が誕生したのを受け、修了者の進路状況を調査を行い、結果を公表した。大学への帰学率は大幅に低くなり、また地域、診療科による偏在が顕著になるなど、社会問題化している状況が、修了者の進路にも如実に表れる結果となった。
2002年度に始まった新医師臨床研修制度では、修了者の大学離れが危惧され、大学における将来の医学教育、研究活動、地域医療に大きな影響を与えることが予測されていた。このため修了者の進路状況を把握し、種々の問題点をピックアップすると共に、具体的な対策を検討していく狙いから、調査が実施された。
調査は、卒後の進路が特殊な防衛医科大学校、自治医科大学、産業医科大学を除く全国80大学を対象に行われ、全大学から回答を得た。検討に当たって対象としたのは、02年3月の卒業者7752名と、04年卒業者で新臨床研修制度の06年修了者7625名。
02年卒業者の大学残留率は71.4%であったのに対し、06年度の帰学率は50.6%に過ぎず、大学に残る割合は21ポイント近くも減少した。また、国立大学は72.0%から45.6%と26ポイント以上、公立大学も77.9%から47.8%と約30ポイントもの大幅な落ち込みとなった。一方、私立大学は70.5%から59.0%と11ポイントの減少にとどまった。この理由としては、私立大学が大都市周辺にあるためと考えられている。
これを裏付けるように、帰学率が関東では67.4%と、低下が4.2ポイントだったのに対し、四国では43.8ポイント減の30.2%、北海道は43.3ポイント減の33.1%、中国は37.3ポイント減の36.0%、東北も32.9ポイント減の30.1%と、過疎地を抱える地域で大幅な減少となった。
さらに各地域の中でも、大都市を抱える都道府県は減少率が低く、小都市しかない県では大幅な減少を示すなど、地域間格差が顕著に表れた。調査でも、50万人以上の都市がある都道府県と、ない都道府県を分析しているが、50万人以上の都市がある県では、僅か6.5ポイント減の62.6%にとどまっている反面、50万人以上の都市がない県の場合は、42.0ポイントと大幅に下がり、32.2%まで落ち込んでいる。
診療科別では産婦人科が30.4%、小児科が49.4%と大幅に落ち込んでいるのに加え、救急が29.8%、外科が43.3%、脳神経外科が55.3%など、外科系で救急医療や24時間体制の診療科、リスクの高い診療科など、患者の生命に直結する診療科の減少が目立った。