杏林製薬と大日本住友製薬は、9月30日で経口抗菌薬「ガチフロ」(一般名:ガチフロキサシン水和物)の販売を中止したと発表した。市販後調査で重篤な低血糖、高血糖が報告されて以来、糖尿病患者への投与を禁忌とするなど安全対策を進めてきたが、米FDAがガチフロキサシンをオレンジブックから削除したことを受け、販売中止を決断した。
ガチフロは、2002年6月に発売された広範囲経口ニューキノロン系抗菌薬で、呼吸器感染症、尿路感染症などに効果を発揮してきた。ただ、市販後調査からガチフロとの関連性が否定できない重篤な低血糖、高血糖が報告されたため、03年3月には緊急安全性情報を発出。重篤な低血糖、高血糖の発症を警告すると共に、糖尿病患者への投与を禁忌とする添付文書の改訂を行った結果、血糖値異常の発現件数は低下した。
一方、米国では導出先のブリストル・マイヤーズ・スクイブが、採算上の理由から06年6月にガチフロキサシン(米国販売名「テクイン」)の販売を終了していた。ところがこのほど、FDAはフェデラル・レジスター(官報)で、安全性などの理由により「テクイン」をオレンジブックから削除したと発表した。これは今後、FDAがガチフロキサシンの後発品申請を受理しない措置となる。
両社は、こうした状況を踏まえ、糖尿病患者における血糖値異常の発現回避を徹底することが困難と判断。代替となる他のニューキノロン系抗菌薬も発売されていることから、今後患者への処方を継続した場合のリスクとベネフィットを考慮した結果、ガチフロの販売中止を決定した。
ガチフロの販売実績は、08年3月期に薬価ベースで約35億円で、杏林製薬が約26億円、大日本住友が約9億円。ガチフロ販売中止の業績への影響は、今後の状況を把握しながら精査していくとしている。