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望月分科会委員長
日本学術会議薬学委員会専門薬剤師分科会(委員長:望月眞弓・慶應義塾大学薬学部教授)は16日、「専門薬剤師の必要性と今後の発展”医療の質の向上を支えるために」とする提言を発表した。提言では、専門薬剤師が薬物療法や薬剤管理指導に関わることで得られる安全面や経済面での効果を示し、そのために必要な知識や技能、体制整備などを盛り込んだ。また、米国の専門薬剤師認定機構(BPS)のような第三者機関の設置や、専門薬剤師の認知度アップのため、積極的な広報活動を行うことも求めている。望月委員長は、専門的な知識・技能を持つ薬剤師の育成強化は、「医療の質向上だけでなく、勤務医の負担軽減にもつながる」とし、提言の実現に向け、行政や関連団体に働きかけていく。
提言の内容は、▽専門薬剤師・高度専門薬剤師が備えるべき知識や技能▽制度面で充実すべき課題――に大きく分かれている。
提言ではまず、薬剤師が薬剤管理指導を行うことは、安全性の向上やコスト削減につながると、国内外の事例を紹介。高コレステロール血症患者のコンプライアンスが全国平均40%から90%にまで上昇したほか、薬学的管理により投与ミスも減り、結果として医療費節減につながっているとの米国薬剤師会のデータを示し、日本でも専門薬剤師育成に力を入れる必要性を強調している。
専門薬剤師が行うべき業務と必要な資質としては、ハイリスク薬の安全使用やハイリスク患者の薬学的管理をはじめ、副作用や相互作用をモニタリングし、必要ならば臨床検査のオーダーを医師に代わって行い、検査結果によっては医師と相談し、薬の服用を中止させるなどの対応を行うこと挙げている。
また、米国では専門薬剤師が医師とあらかじめ協定した範囲の中で、処方せんの発行、臨床検査の実施指示などを行っているケースが増えている実態に触れ、医師との協働のもと、副作用の重篤化回避や、治療に難渋する患者に適した処方提案・処方設計を担うことも必要としている。
高度専門薬剤師は、これらの資質に加え、先端的な薬物療法の研究に携わり、専門薬剤師の育成を行うことが求められる。望月委員長は、「大学の教員で、専門薬剤師教育を行う人たちは、高度専門薬剤師の認定を受けていることが望ましい」としている。
望月委員長は、これら取り組みが医師の負担軽減、医療の質向上につながると期待されるが、「法律の壁により制限されてしまう」問題点を指摘。提言に、専門薬剤師の裁量範囲拡大を前向きに検討することを盛り込んだと説明した。
第三者認定機構設置も要望
一方、制度面では、日本病院薬剤師会、日本医療薬学会などが独自に専門薬剤師を認定しており、その認定基準にバラツキがあるため、第三者認定機関の設立を求めている。米国では全ての専門薬剤師についてBPSが認定試験を実施、合格者に対して認定を与えており、7年ごとの更新が義務づけられている。提言では、専門薬剤師の質向上を図るためには、第三者機関によって保証された研修・認定の仕組みを求めており、第三者機関には薬剤師だけでなく、医師、看護師、患者代表も加えることが望ましいとしている。
また、専門薬剤師が他の医療職種にあまり認知されていない実態に対しては、医療機関における専門薬剤師の広告規制の見直し、関係団体による積極的な広報活動を求めた。
望月委員長は、学術会議のとりまとめには、主に「要望」「提言」「報告」の3種類があると説明した上で、「提言は強制力のある要望に次ぐもの。社会に向けて、こうしていくべきということを訴えかける要素が比較的色濃い。提言を出した以上、われわれにも責任があるので、実現に向け積極的に各方面に働きかけていきたい」と述べた。
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