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厚生労働省は、多発性骨髄腫の適応で藤本製薬が承認申請しているサリドマイド製剤(製品名:サレドカプセル100)について、厚労省と藤本製薬がまとめた市販後安全対策案を公表し、パブリックコメントを開始した。1960年代に服用患者で奇形児出産が多発した問題を踏まえ、万全の安全対策が必要だとし、妊娠回避の徹底などを明記。使用の際は登録制をとり、診察や処方の都度、企業に報告を求めるなどの厳格な内容となっている。厚労省では通常の承認審査と併行して、医薬食品局安全対策課で同案をもとに市販後対策を議論する。最短で9月末の薬事分科会で安全対策も含めた承認の可否が決まる。
藤本製薬では06年に同剤の承認申請後、併行して安全対策も検討してきた。公表した「サリドマイド製剤安全管理基準書」案では、使用可能な施設を原則として日本血液学会研修施設で、医師は日本血液学会認定血液専門医またはその指導を受けられる立場にある者などに限っている。
また、厳格な管理と適正使用を推進するため、特約店への出荷、医療機関への納付、処方、調剤など、一連の情報を藤本製薬が一元管理する。このため、同剤を使用する場合、処方医師や責任薬剤師、患者、特約店責任薬剤師の情報を登録し、診察や処方の都度、基準を踏まえた対応が取られたかを、医療機関は藤本製薬に報告しなければならない。
さらに、妊娠する可能性がある女性に対しては、他に治療方法がない場合を除いて、原則として処方を認めないこととした。
流通管理も徹底し、医療機関や患者に所定の様式による数量管理を求め、使用中止や死亡などの場合には、医療機関を通じて藤本製薬に返却させることとしている。卸業者は麻薬卸売業の免許を持つ者に限っている。
適正使用を徹底させるため、藤本製薬では、第三者による評価委員会を設けて、使用する医療機関や薬局、患者を調査し、規準が遵守されているかチェックを行う。
サリドマイド製剤は50年代末に睡眠薬として欧米諸国や日本で販売開始後、妊婦のつわり防止薬としても広く用いられ、各国で催奇形性が問題となった。その後、血管新生阻害作用が認められたことから、多発性骨髄腫の適応で2003年に豪州で再承認されたことを皮切りに、06年に米国、07年に欧州EMEAと承認の動きが相次いだ。
多発性骨髄腫は難治性で再発も多いことから、国内の患者団体からも承認の要望が寄せられており、05年に稀少疾病用医薬品として指定を受けていた。
安全対策案のパブリックコメントは9月11日まで。安全対策課では、近日中に有識者による検討会を設置して、安全対策の検討を開始する。
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