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提携発表する大谷アイン社長(左)と
村田セブン&アイHD社長
調剤薬局最大手のアインファーマシーズ(社長大谷喜一氏)と、セブン&アイ・ホールディングス(社長村田紀敏氏)の両社は5日、業務・資本提携で基本合意したと発表した。セブン&アイが、今月末にアインが実施する第三者割当増資を引き受け、7.8%の株式を保有する。同日、東京千代田区のセブン&アイ本社で会見した両社トップは、「双方のグループの持つ経営資源を相互に活用することで、それぞれの顧客に対し、より付加価値の高い、専門性に優れた商品・サービスの提供が可能となる。提携により、相互の企業価値向上が図れるものと確信している」と強調した。今後は病院前などに共同出店するほか、イトーヨーカドーなどの店内にもアインの薬局を開設、さらには商品の共同開発などにも着手していく考え。
アインファーマシーズは、主力の調剤薬局事業において、グループ計362店舗を全国に展開するほか、ドラッグストア事業ではコスメティックを中心とした商品構成が特徴の「アインズ&トルペ」など45店舗を展開する。セブン&アイHDは、2005年9月の設立以来、「新・総合生活産業の創造」を掲げ、コンビニエンスストア、総合スーパー、百貨店、食品スーパー、フードサービス、金融サービス、ITサービスなど多彩な業態を傘下に擁する。
業務提携は、▽店舗▽医薬販売▽商品開発””の三つを柱とする。病院前や病院内などにおける調剤薬局とコンビニとの共同出店や、ドラッグストアのGMSやショッピングモールへの出店、さらにはショッピングモールでの医療モールの共同開発も行っていく。
また、明年度からの一般用医薬品の新販売制度への対応も含め、薬剤師、登録販売者など人材教育面・採用面での連携も検討していく。さらに、医薬事業およびドラッグ事業におけるPB商品の共同開発などによって、高付加価値で専門性に優れた商品を双方の店舗で販売していく。
会見でセブン&アイHDの村田社長は、「今後の高齢化社会で、健康・美、医療という分野、マーケットへの対応が重要な課題だ。両社の経営理念が非常に近いこと、そして調剤・教育システムにおけるアインの非常に高い専門性が組み合わさることで、創造性と付加価値の高い、新たな事業展開が進められると判断した」と述べた。
傘下のイトーヨーカドーでは、約100店舗で医薬品を販売しているが、調剤については数店舗であり、村田社長は「薬剤師に対するアインの教育システム、運営管理面を非常に重視している。(販売制度改正による)コンビニでの医薬品販売も、将来的な課題ではある」としたほか、セブン銀行のATM機能や、流通系初の電子マネー「nanaco」をアインの調剤薬局に設置していく可能性など、「様々な面でグループが持つインフラと、アインの専門性が融合され、何か新しいものを創造できるのではと思う」との期待感を強調した。現時点での追加出資に関する予定はなく、「今後の状況次第で考えたい」とした。
一方、アインの大谷社長も「日本最大の流通グループのインフラを利用できることや、その運営手法等を学べるのは非常に大きなメリットだ。このチャンスを、ぜひ生かしたい」と強い期待を述べた。
さらに大谷社長は、「607兆円とされる調剤マーケットは、4.5兆円まできている。当然ながら次の展開と共に、残りのマーケットへの対応が急務だ。今後は直接的な出店と、既に出店している部分(企業)を組織化していくという二つの戦略を進めていく。その中で、セブン&アイHDのインフラは非常に有効なものになると思う。物流効率の悪さが課題でもあるジェネリック薬についても、全国各地のイトーヨーカドー、セブン‐イレブンの活用が可能かどうかも、これから検討していきたい」と述べた。
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