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独メルク・クライ会長
独メルクのカール・ルドウィッグ・クライ会長は24日、都内で記者会見し、「日本は戦略的に重要な市場だ」と述べ、承認取得した抗癌剤「アービタックス」の導入などを視野に、日本の医薬品事業・化学品事業で売上高3倍増を目指す方針を明らかにした。クライ会長は「304年以内に1500億円の売上高を達成したい」との目標を示し、日本市場を重視していく姿勢を強調した。
メルクは、ジェネリック医薬品事業を売却したことにより、医薬品事業と化学品事業の2本柱で、イノベーションに根ざした成長を目指す戦略を明確にした。特に医薬品事業を手がけるメルクセローノの業績が好調で、2008年上半期決算はバイオ医薬品と低分子化合物を強みに、売上成長率13%、営業利益14%増とメルクグループの成長を牽引している。
またクライ氏は、米国臨床腫瘍学会(ASCO)で抗癌剤「アービタックス」が特集されたことを「重要な出来事」と高く評価し、「08年はアービタックスの年になった」と強調した。16日には、EGFR陽性で治癒切除不能の進行・再発転移性大腸癌を対象に、日本で承認を取得。23日には、転移性大腸(結腸・直腸)癌のファーストラインを含むK‐ras野生型転移性大腸癌への適応拡大が欧州で承認されたことから、クライ氏は「10億ユーロ(約1680億円)以上を売り上げるブロックバスターになる可能性を持っている」と、アービタックスの成長に期待を示した。
その上で、癌領域を中心に、不妊治療、神経変性疾患の専門領域に注力する方針を示し、「メルクセローノは程良い規模が利点だ。合併で規模の大きさを追求するのではなく、イノベーション中心のバイオ医薬品を提供するベストファーマを目指す」との目標を強調。アービタックスの適応拡大を中心に充実した開発パイプラインに自信を示し、「今後5年間で医薬品事業のビジネスは発展するだろう」との見通しを述べた。

メルクセローノ・パタソン社長
一方、メルクセローノ日本法人のウエイン・パタソン社長も、「日本には非常に大きな機会がある。外資系製薬企業の日本からの撤退、事業縮小が相次いでいるが、われわれは逆の戦略を取っている」と日本を重視する姿勢を強調した。
その上で、昨年10月のメルクセローノ発足から1年間で、解毒薬「シアノキット」の発売とそれに伴う社員増、抗癌剤「アービタックス」の承認取得、成長ホルモン剤「サイゼン」専用電動注射器「イージーポッド」、女性不妊治療薬「ゴナールエフ」の承認申請など多くの成果が得られたとし、09年にかけて癌領域を強化すると共に、不妊治療領域のリーダーを目指していく考えを示した。
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