国内製薬企業は医薬品の開発速度を上げるため、PI以降の試験に、より多くの資源を投入する傾向にあることが、富士経済の調査で明らかになった。調査は医薬品メーカーの研究開発体制を探ったもので、4月から6月にかけて国内14社、外資系12社を対象に、ヒアリングや各種公開資料による文献などを用いて実施された。
国内企業の場合は、売上高の20%前後を研究開発に投資するのが標準的なビジネスモデルとなっている。開発に必要な臨床症例数の増加や、CROなどの外部組織を活用する機会が増えていることから、研究開発費に占める開発費の比率が14社の平均で50%を上回っていたという。特に海外開発では、在外法人がCROへの発注と管理を行うだけのケースもあり、開発費を押し上げる原因となっていると指摘している。
外資系企業については、研究部門を日本国内に置かないケースが増えており、経営資源を研究費に投資せずに、開発費に集中することも可能としている。ただし売上高に対する研究開発費の比率は、海外本社に比べ低い傾向にあるという。
開発分野としては、日本国内の医療用医薬品市場での構成比が最も高い「循環器」を重点開発領域とする企業が最も多かった。次いで開発期間が短く、アンメットニーズが満たされていない「癌」、未開拓領域と捉えらている「精神神経」、今後糖尿病患者の増加が見込まれている「代謝系疾患」に重点を置く企業が多いとしている。
循環器領域では、血栓症や梗塞を適応とした薬剤、降圧剤のアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を補完するレニン阻害剤などの開発が進められているという。癌領域では今後、結腸・直腸癌に対する抗癌剤の開発が高まると見られている。
精神神経疾患領域では、パーキンソン病や認知症に対する開発品目が目立っており多く、5年から10年後に登場する新有効成分医薬品は、28品目で最も多いと予測されている。代謝系疾患領域では、糖尿病を適応症とした開発品目が多く、血糖降下薬とインスリン抵抗性改善薬の開発競争が激化すると分析している。