厚生労働省の難治性疾患克服研究事業として、新たに「下垂体機能低下症」など7疾患が、来年度から加わることが決まった。現在、123疾患が対象となっている。
今回の措置は、患者団体からの要望などを踏まえた対応。既に実施している研究に、類似疾患として追加する。
追加される疾患は、間脳下垂体機能障害として「下垂体機能低下症」「クッシング病」「先端巨大症」の3疾患と、神経変性疾患の「原発性側索硬化症」「有棘赤血球を伴う舞踏病」の2疾患、免疫性神経疾患の「HTLV‐1関連脊髄症(HAM)」、稀少難治性皮膚疾患の「先天性魚鱗様紅皮症」の合計7疾患。
「下垂体機能低下症」(患者数約7000人)は副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモンの不足で脱水、血圧低下、意識障害などが出現し、生命予後に重大な影響を与える。
「クッシング病」(約1000人)は下垂体腫瘍に起因して、副腎皮質ホルモン分泌が亢進した結果発症し、中心性肥満などの独特の「クッシング様体型」や皮膚症状などが現れ、精神障害の頻度も高い。
「先端巨大症」(約1万人)も下垂体腫瘍によるもので、顔貌の変化、手足の増大などが生じる。糖尿病及び耐糖能低下が約75%に出現する。
「原発性側索硬化症」(患者数約150人)はALSの亜型ともいわれ、上位運動ニューロンに進行性の変性を来す。「有棘赤血球を伴う舞踏病」(患者数約100人)はハンチントン病との関連が指摘されている。
「HAM」(1400人)は、ヒトT細胞白血病ウイルス感染に伴う脊髄症に起因し、歩行障害などの神経障害を来す。「先天性魚鱗様紅皮症」(1500300人)は先天的異常により皮膚の角質が厚くもろくなり、皮膚剥離や水疱が形成される。
また、難治性疾患克服研究事業では、これまで臨床調査研究分野と横断研究分野、重点研究分野の3分野で研究を実施していたが、これに加えて実態把握が進んでおらず、体系的な研究が行われてこなかった分野で臨床知見を集積するため、「研究奨励分野」を設置する。1分野につき1000万03000万円程度の予算で、1年単位での研究を予定している。
研究は単独ではなく研究班を組織して行い、臨床知見に基づく診断基準の作成、疫学調査、治療実態の把握等を行い、治療法の確立につなげることを目的としている。研究班は今年10011月に公募し、来年度から研究を実施する。