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厚生労働省は13日、医療事故死の原因を究明する第三者機関「医療安全調査委員会」(仮称)の新設を柱とする第三次試案を、「医療安全調査委員会設置法案大綱案」としてまとめた。大綱案では、医療機関が医療事故を調査委に届け出た時は、警察への異状死の届け出は不要とする「医師法21条」の改正を行うことも盛り込んだ。第三次試案は現在、パブリックコメントを募集中で、その意見を踏まえて第四次試案として再整理し、法案化して秋の臨時国会での成立を目指す。
調査委新設の背景には、これまでの警察、司法では原因究明が不十分で、再発防止にもつながっていないという問題意識がある。そこで医療の専門家や法律家らからなる調査委を新設し、死亡事故について医療機関から報告を受け、調査し、原因究明を行うことで、事故防止に役立てたい考えだ。
死亡事故が起きた場合、新法では医療機関の判断により、基本的には調査委に届け出る。それを受け、届け出を受けた地域の医療安全地方調査委員会が調査チームを編成して調査。終了後、医療安全調査中央委員会が必要に応じて対象の医療機関・医師に勧告を行うなどして、事故の再発防止を図るという流れ。
調査委の委員は、透明性や中立性、公正性を担保するため、独立した立場で、業務に関し主管大臣からの指示・命令は受けない。医療の専門家のほか、法律家や医療を受ける立場にある者も参加する。
現行制度では、死亡事故は異状死扱いとなり、医師法21条により医師が警察に届け出ることになっている。新法下では医師が医療機関の管理者に報告すれば、警察への届け出は不要となる。ただ、例外的に警察に届け出るケースを定めており、▽故意による死亡や死産▽「標準的な医療から著しく逸脱した医療」による死亡や死産▽事故の隠蔽や改ざん▽事故を繰り返すリピーター医師””などの悪質とみられる場合に限った。
大綱案では、調査委の主管省庁は特定されていない。医療情報を扱うため厚労省とすべきとする意見がある一方、省庁の上に立ち調整機能を果たす内閣府とすべきなどの異論もあるため、さらに検討が必要としている。
第三次試案に対しては、医療関係団体や学会などから様々な意見が寄せられた。日本医師会や歯科医師会、日本看護協会、日本薬剤師会は賛同。他の医療関係団体からも制度の趣旨には基本的に賛同が得られているが、学会からは「(医師の)責任追及を目的としないことの制度上の担保が必要」「調査の結果を訴訟や行政処分につなげるべきではない」などと、医師の訴訟リスクの回避を強調する意見もある。
一方、患者団体や弁護士側からは、「医療機関の恣意的判断の余地を残す恐れがあり、届け出義務範囲を修正すべき」など、より厳正なルール化を求める要望などが寄せられている。
- 医療事故報告の方針案まとまる‐「医療機関」が届け出るかを判断
2008年02月26日
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