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ランバクシー買収で記者会見
第一三共の庄田隆社長は12日、都内で記者会見し、ランバクシー・ラボラトリーの買収で50億ドル(約5000億円)の貢献が見込まれ、2015年に掲げる売上高1兆5000億円を前倒しで達成できる見通しを明らかにした。その上で、「新興国市場が30年には、日本と北米を合わせた規模に拡大する可能性がある」と指摘。「先進国だけの従来型ビジネスでは変化に対応できない」と買収を決断した背景を語った。これまで国内製薬大手の中で大きな動きを見せなかった第一三共は、新興国市場と後発医薬品を手中に収める「複眼経営」で、一気に世界展開を加速する戦略に打って出た格好だ。
第一三共は、15年までのビジョンとして、世界の主要拠点で医薬品に集中した事業を展開すると共に、売上高1兆5000億円、営業利益率25%以上、海外売上高比率65%以上を掲げている。庄田氏は、今回の買収に至った背景として、「欧米のメガファーマのようなハイリスク・ハイリターン型のビジネスでは、成長を求めていくことが難しい」との考えを示すと共に、「新薬もジェネリックも患者が必要とする医薬品であることに変わりはない」と述べた。
こうした考えを全て満たすベストシナリオが、先進国市場+新興国市場、新薬+ジェネリック医薬品の双方に対応でき、ハイブリッド型経営を実現できるランバクシーの買収だった。これにより、第一三共は、世界56カ国に営業拠点を拡大し、グローバル展開の足場を確実なものにする。
ランバクシーの営業網は、BRICsを始めとする新興国のみならず、次の市場となる可能性の高いアフリカ大陸もカバーしている点が注目される。特にランバクシーは、300人以上の研究員を創薬研究に投入し、感染症やマラリアなど、途上国向けの新薬開発を積極的に進めていることから、庄田氏は「複眼経営により、地域が必要とする医薬品を提供することが可能になる」と意義を強調した。
■国内ジェネリック事業、第一三共は実施せず
一方、日本国内でのジェネリック医薬品事業について、庄田氏は「第一三共は日本における十分なノウハウを持っているが、直接マネジメントを行うことはしない」と明言。その上で、「ジェネリックに強いランバクシーの事業拡大にわれわれのノウハウを活用し、ランバクシーを通じて健全なジェネリック市場の形成に寄与したい」との考えを明らかにした。
会見に同席したランバクシーのマルビンダ・シンCEOは、「日本ではジェネリックの比率を高めていく動きがあり、今後大きな機会がある」とした上で、「日本のジェネリック市場でリーダーシップを取っていきたい」と述べ、日本でトップシェアを狙う考えを表明した。ただ、具体的に目指す市場規模については「まだ時期尚早」と述べるにとどめた。
現在、ランバクシーは、日本ケミファとの合弁会社「日本薬品工業」を通じてジェネリック医薬品を販売しているが、シン氏は、ケミファとの関係について、「合弁会社は好調に推移しており、今後も尊重していく」との方針を明らかにした。当面、ランバクシーは第一三共の子会社として、日本薬品工業とのジェネリック医薬品の販売を継続していく方針と見られる。
■新たなハイブリッド経営”世界展開で新興国に照準
昨年来、相次いだ国内製薬大手の買収劇は、米国市場とバイオ医薬品が大きなキーワードとなっていた。しかし今回、これまで動きを見せてこなかった第一三共が打ち出したのは、新興国市場と後発医薬品をキーワードにしたハイブリッド型ビジネスという、今までとは全く異なるモデルだけにインパクトは大きい。
既に欧米に足場を築いている第一三共が、インド最大のジェネリック企業を買収し、広く世界をカバーする戦略を打ち出した意味は、欧米中心の「グローバル」から、新興国や途上国を含めた真のグローバル展開への転換にある。庄田氏は「20年には第一三共グループが事業展開する地域の多様性は、満足できるところに達している」との見方を示しているように、インド、東欧、中南米、さらにはアフリカまでをカバーし、新薬とジェネリックを地域のニーズに応じて販売する戦略は、業界再編そのもののグローバル化をさらに促す可能性もある。
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