今月1日から特定健診・保健指導制度がスタートした。新制度は、40歳から74歳の医療保険加入者5600万人を対象に、メタボリックシンドロームの早期発見と、その改善を目的としたものだ。
特定健診制度の主な流れは、健康診査、健診結果に基づき健診者を「情報提供」「動機付け支援」「積極的支援」の3ランクに階層化、次回健康診査でのメタボリック改善度の確認からなる。
その中で、新制度の成否の鍵は、保険者に義務づけられた、健康診査でメタボリックシンドロームの予備軍と判定された「動機付け支援者」、メタボリックシンドロームと判定された「積極的支援者」への特定保健指導にある。
特定保健指導では、医師、保健師、管理栄養士が支援計画を作成し、そのプランに基づいて食生活の改善や運動の実践的指導を行う。実践的指導を行う専門的知識及び技術を有する指導者として、看護師、保健師、管理栄養士などと並んで薬剤師が名を連ねるようになったのは記憶に新しい。これら医療従事者は、運動療法は147時間、食生活は30時間の研修を受ければ、指導者としての基準が満たされる。
特定健診や特定保健指導の実質的な取り組みは、国民健康保険加入者は都道府県医師会、企業などの健康保険組合加入者は民間機関を中心に行われている。
だが、特定保健指導については、市町村国保と医師会の契約が進んでいない。民間機関も、具体的な内容を示しているところはほとんどない。残念ながら、暗中模索という言葉がピッタリと当てはまるのが現状だ。
また、この制度の問題としては、「積極的支援者」は積極的介入はあるものの、施設で特定保健指導を受けた人たちの実践が、受けた人任せになること。自己責任とはいっても、なかなか実践の継続は難しい。
そういった人たちをフォローするのは薬局が最適ではないか。薬局は、既にメタボリックを含めた健康相談を行っており、地域の健康ステーション的役割を担ってきた実績を持つ。さらには、一般市民が気軽に立ち寄れる重要な情報提供の場としても認知されているからだ。
従って、「特定保健指導は、薬を使わないので薬剤師は不用」「薬剤師は、禁煙指導だけの関与でよい」といった意見は、全く現実を理解していないものだ。
薬局が特定保健指導をフォローする具体的施策の一つに、身体活動量を測定する身体活動量計の活用がある。身体活動量計は、万歩計程度の大きさで、低強度の生活活動から活発な運動に到るまで、日常の全ての身体活動が記録できる優れものだ。保健指導に不可欠な客観的データ取得を現実のものとし、それに従って指導すれば計画的な減量もサポートできる。
信州大学と長野県薬剤師会では、今月から「インターバル速歩」事業の連携を開始した。同事業は、130件以上の薬局が地域の拠点となり、パソコンを使ってデータの転送や健康づくりのアドバイスを行うというものだ。この取り組みを必ず成功させて、薬局が地域住民の予防医学に十分寄与でき得ることを証明してもらいたい。
また、各都道府県の薬剤師国民健康保険組合は、新制度における積極的な薬局活用を促してほしい。