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厚生労働科学研究費を使って研究する研究者が、特定の企業などから多額の研究費を受領し、研究成果の公正さが疑われかねない状況(利益相反=COI)を招かないようにするための厚生労働省の指針が13日、厚生科学審議会科学技術部会で了承され、2010年度から実施されることになった。これまでCOIを管理する機関はなかったが、指針では厚労科研費による研究を行う研究者が自己申告したCOIを、大学など研究機関に原則として設置するCOI委員会が管理する。COI委の管理下にない研究者は、厚労科研費の交付が受けられなくなる。
指針の名称は「厚生労働科学研究における利益相反の管理に関する指針」。今月末までに厚生科学課長通知として発出される予定。10年度の厚労科研費を受けるには、その前にCOI委の設置、そこへ申告が必要になる。運用の留意点をまとめたQ&Aも策定された。
指針が策定されたのは、インフルエンザ治療薬「タミフル」(中外製薬)の副作用問題を検証していた研究班員が、中外製薬から奨学寄付金を受領していたことなどで、研究成果の公正さに疑いが生じ社会問題化したため。そこで厚科審の検討会が、COIを適切な管理を促すことを狙いとする指針を検討してきた。
実施されれば、厚労科研費によって研究する大学など研究機関は、COI委の設置が必要になる。研究者は、厚労科研費の交付申請までに、企業などから受け取っている研究費、株式、知的所有権など金銭的価値を持つ「経済的な利益関係」をCOI委に対し申告し、審査を申し出ていることが必要になる。申請時には審査結果までは必要としていない。
申告するケースについては、[1]企業・団体など同一組織からの年間の提供合計金額が100万円超[2]産学連携活動に関係する受入額が、同一組織から年200万円超””などと「例示」しているが、一般からの意見で“抜け道”も指摘された。
そのため、この例示にかかわらず「外部から弊害が生じているかのごとくみられる可能性が懸念される場合には、COI委員会に積極的に相談するなど」十分な注意が必要だとした。
審査結果、是正が必要となった場合は、当該研究への参加の取り止めや供与されている経済的利益の放棄などを機関の長が指導。厚労省にも報告する。必要に応じて厚労省も調査する。
13日の部会では、「外部から弊害が生じているかのごとくみられる可能性が懸念される」ケースについて、各機関に判断を委ねると、判断にバラツキが出るおそれが複数の委員から指摘された。矢島鉄也厚生科学課長は、活発な研究を阻害しないよう現場の状況に応じた対応が必要なため、画一的な運用にしなかったとして、理解を求めた。
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