厚生労働省医薬食品局は、輸血用血液製剤に混入したウイルスなど感染症因子を不活化する技術を導入する方針を固め、27日に薬事・食品衛生審議会血液事業部会の安全技術調査会で検討を求めた。献血血液中のHIV感染件数の増加など、感染リスクが高まっていることから、何らかの対策が必要として取り組むことになった。
調査会では、不活化処理による有効成分減少に伴う製剤使用量の増加や、処理用薬剤による副作用リスクが生じる恐れがあることから、慎重に検討することにしている。医薬食品局では、導入すべき範囲や方法、安全性などのリスク、費用と効果を検証後、夏までに導入に関する判断を得たい意向だ。
混入微生物の不活化法としては、血液に入れた薬剤に近紫外線など一定波長の光を照射することで、感染性因子の核酸を破壊する方法が海外で広く行われている。
花井十伍委員(ネットワーク医療と人権)は調査会で、「(血液中に入れる)薬剤の副作用などのリスクと、導入によるメリットを比較した上で、導入の可否を決定すべき」と慎重な姿勢を見せた。
さらに委員会では、不活化処理に伴う製剤の活性低下を懸念する指摘も出た。不活化処理に最も使われている薬剤「メチレンブルー」では、輸血用血液製剤中の凝固因子活性が203割低下するという。
医薬食品局血液対策課でも、「不活化により(血液中の)フィブリノゲン量が低下すれば、血液製剤の必要量は1.5倍にもなる。ドナー確保にもつながる問題」とし、さらなる検討が必要だとしている。
血液対策課では、リスクも含めて検証を進めるとしたが、「肝炎やHIVなどで、不活化していなかったために感染したということがあってはならない」と、導入の必要性を強調した。次回は処理用薬剤のメーカーや販売元3社から、安全性の問題を中心にヒアリングする。