質の高いコミュニティファーマシスト育成へ
薬剤師あゆみの会(本部大阪市、理事長狭間研至氏)は、「質の高いコミュニティファーマシスト」の研修育成を目的に2005年に有限責任中間法人として設立。06年に薬剤師認定制度認証機構(CPC)の認証研修機関として、新人薬剤師研修や在宅医療関連研修に注力している。現在、正会員13社、準会員3社の薬剤師会員630人を擁し、会員外の薬剤師に向けても幅広い研修を実施。全薬剤師を対象にした「認定薬剤師」取得研修のほか、同会会員のみを対象とした能力クラス別研修コースなどを提供する。
会員向けには、新人薬剤師から薬局経営者までを対象とした4段階(ジュニア、ミドル、シニア、エグゼクティブ)の能力クラスを設定。能力評価として医療薬学中心の知識と、それを現場で生かすことのできる実務能力の二つを判定し、一定基準を満たせば、段階的にステップアップさせる研修制度を構築している。会員は、能力クラス別研修コース受講者は、能力クラス別の一定の研修が修了後、本人の希望で能力クラス昇級の能力検定試験を受けることができ、認定薬剤師の認定証とは別に、能力クラスの合格証も発行している。
同会の研修プログラムについて村井俊之副理事長は「会員企業1社だけでは効果的な研修ができないケースでも各企業が培ってきたナレッジ情報を共有し、研修課題を解決していることが最大の特色」とし、より現場に近い、実践的な研修を企画していることを強調する。
昨年の診療報酬改定で創設された「かかりつけ薬剤師指導料」の算定要件ではCPCが認証する研修認定制度等の研修認定を取得する「認定薬剤師」の配置が必要となった。「そのことが当会には追い風となっており、個人も含めた中小薬局からの問い合わせも増えている」という。今後は、研修内容の質を担保しつつ、会員を増やす方向で進めていく考えだ。
同会は、これからの「かかりつけ薬剤師」に必要な保険調剤に加え、在宅医療、統合(補完代替)医療、OTCといった各研修も企画。現在、特にスポットを当てて取り組むのが、地域包括ケアシステムの中でも薬剤師のメイン業務となり得る在宅医療関連の研修会の開催である。
これまでオープン研修として東京、大阪で開催していた認定薬剤師指定在宅セミナーは、今年度から地方開催も含めて年4回実施する計画である。同セミナーでは在宅医療の最前線で活躍する講師を招聘し、薬剤師の在宅での役割や使命、今後の展開に関するシンポジウムの開催や在宅医療の実践事例などの報告発表を行っている。
また、在宅医療に取り組む前段階の薬局薬剤師向けの在宅実践研修会は、聴診器の使い方や血圧計、パルスオキシメーターの測り方など在宅医療の現場でも必要とされるバイタルサインのチェックができる講習会を実施。これまでは、新人研修の一環として取り組まれていたが、2015年から在宅医療研修の一つのパッケージとして単独で開催。在宅医療への第一歩の取り組みとして充実した内容を揃える。
さらに、新人、ベテラン薬剤師を含む在宅実践セミナーは、一昨年は臨床検査値を表示した処方箋を発行する医療機関が増加する中で、検査値を活用した服薬指導、在宅医療での取り組み提案などを研修として企画。昨年は、薬剤師介入によるポリファーマシーの解消をテーマに、さらに今年5月は、緩和ケア、終末期医療にも焦点を当てた。村井氏は「在宅医療の中でも様々な場面があり、それぞれの場面を想定した中で、テーマを設けて取り組んでいる。イメージとしては在宅医療の薬剤師業務の底上げを図りながら、最新のトレンドを取り入れている」と話す。
さらに、「われわれは質の高い“コミュニティファーマシスト”の育成を目指すという大きな理念がある。在宅医療研修にも注力していくが、健康サポート薬局を見据えたOTC研修にも取り組んでいる。これからのあるべき薬局、薬剤師の流れを見定めながら一つ一つ研修メニューを構築していきたい」と展望している。
一般社団法人 薬剤師あゆみの会
http://www.ph-ayumi.org/