■ライフサイエンス分野拡充へ
|
立命館大学は4月、草津市のびわこ・くさつキャンパス(BKC)に薬学部薬学科(6年制、定員100人)を新設する。同時期に立ち上げる生命科学部と薬学部をほぼ一体の組織として運用し、ライフサイエンス分野の教育研究体制を拡充するのが狙いだ。最初から薬学部新設を構想したのではなく、この分野を強くする方策を検討する中で、具体策の一つとして薬学部の設置が浮上したという。近畿2府4県では14校目、滋賀県では初の薬学部になる。各地の薬学部新設大学が入学者確保に苦労する中、2月実施分の入学試験には1674人の志願者を集めるなど良好な滑り出しを見せている。
「今後の21世紀は、薬学も含めたいろいろな領域でのライフサイエンスの総合的な展開をするのが、総合大学の強みにもなると判断した」と、生命科学部・薬学部設置委員会事務局長を務める久保幹氏(理工学部化学生物工学科教授)は話す。
立命館大学は4年前から学内に委員会を立ち上げ、ライフサイエンス分野の展望について討議を重ねてきた。この分野はさらに伸びると見通したほか、文・社系の学生に対するこの分野の教育の充実も必要と判断。教育研究体制の拡充を決めた。
学内には既にその基盤として、理工学部や情報理工学部に化学生物工学科、応用化学科、生命情報学科などが設置されていた。化学やバイオテクノロジー、環境などに強みはあったが「ヒトに関わる領域はなかった」(久保氏)。それを補完するため医学、薬学の領域を立ち上げたという。
4月に新設する生命科学部には、これら既存の3学科を再編して組み込んだほか、医学の基礎研究などを担う「生命医科学科」を新たに設置して加え、4学科体制(定員計280人)にした。昨年12月に認可された薬学部を含め、ほぼ一体の組織として運用する方針だ。
「できるだけ学部、学科の垣根を低くして融合型の組織を作る」(久保氏)のが狙い。ライフサイエンス領域は幅広いが、他大学の現状を調査すると横の連携がほとんどないことが分かり、後発として組織を構築する立場にある立命館大学では、「融合」を一つの特徴に据えたという。
当初は薬学部も生命科学部薬学科としての設置が予定されていた。行政側との折衝で現在の形に落ち着いたが、一体となって運用するという理念は変わっていない。薬学を単独で新設するのではなく「薬学もやるということ」と久保氏。「一体型のライフサイエンスを展開するために薬学が必要という形」と解説する。
薬学部と生命科学部には、幅広い知識を身につけられるよう共通カリキュラムが編成された。各学科の強みを生かし合いながら教育を行う体制だ。共同研究も推進する。文・社系の医療経営論、医療経済論などを学べる仕組みもある。
薬学部では薬剤師養成に加え、研究にも力を注ぐ。「臨床現場にマッチした薬剤師を養成するのは当然だが、それ以外のニーズが出てくる可能性があり、そういうのも吸収できる」(久保氏)。将来は6年制課程の上に大学院の設置を計画している。
07年1月には、関西医科大学と学術交流に関する包括協定を結んだ。教育研究協力協定を02年に締結した滋賀医科大学を含め、他の医大との連携を深めながら教育研究を充実させる。病院での実務実習体制の整備に向け、定員100人分の実務実習受け入れの了承を各病院から取りつける上でも、関西医大などの協力を得たという。
薬学部の教員は、助教とみなし教員を含め34人。学内の理工学部などから異動して着任する教員と、学外から新たに着任する教員がそれぞれ半分ずつの比率になる。薬学博士号を持つなど薬学出身者が20人弱を占めるほか、提携する2医大などを通じて医師免許を持つ複数の研究者を新たに招いた。薬学部長には北泰行氏(現大阪大学大学院薬学研究科教授)が4月に就任する予定だ。
受験生の反応は良好だ。「われわれは研究マインドも育てる。それに対する高校生の潜在的な要求は強い」と入試担当の花崎知則氏(理工学部応用化学科准教授)。製薬会社などに卒業生を送り出してきた実績や総合大学の魅力が評価され、「新しく何もないところから作った大学とは一線を画することができたのではないか」と話す。生命科学部も倍率約30倍の人気だ。
同キャンパスの一角に建設中の薬学部・生命科学部の新校舎は4月から稼働する。一部5階建、延べ床面積は6000m2弱。校舎内には、模擬薬局や模擬病室、動物飼育室、教員研究室、卒業研究室、共同研究施設などを設ける。講義室や化学系実験室は既存の施設を活用する。薬草園は来年度以降、温室なども含め設置するという。
- 【立命館大学】2008年に薬学部設置へ
2006年08月23日