先週、国内ジェネリック医薬品(GE薬)メーカー大手の沢井製薬が、米国GE薬企業のアップシャー・スミス・ラボラトリーズとの買収合意を発表した。米国企業の買収はGE薬企業としては昨年の日医工に続いて2社目となる。
沢井製薬の澤井光郎社長は今回の買収により、日本でのGE薬市場の成長を基盤に、国内に次ぐ第二の柱として米国市場での展開を加速化させる考えを示している。買収に対する評価は様々な見方があるだろうが株式市場だけを見るとこの発表以降、続伸しており期待感が示されている。
ここ10年ほどの間、政府が推進する医療費抑制策の中でGE薬はその急先鋒として使用促進が取り組まれてきた。その施策と相まって国内GE薬メーカーも急成長し、2社が売上1000億円超企業に名乗りをあげる。
一方、国内のGE薬数量シェアは、その指標は変更されたものの現在約66%にまで拡大。その数量シェア拡大対応に向けた生産設備増強への投資が必要になる。しかし、市場規模の大きいGE品目には数十社の参入などで価格競争は激化。これが薬価引き下げにつながるなど、GE薬メーカーの経営環境は必ずしも良好とはいえない状態が続いている。
また、GE薬の台頭に伴い長期収載品目を抱えるメーカーも事業の見直しを余儀なくされている。
新薬大手の武田薬品と世界最大手GEメーカーのテバ社は合弁会社として武田テバファーマを発足させ、GE薬と長期収載品の提供を通じた新たなビジネスモデル展開を開始。直近では、田辺三菱製薬がGE薬事業と長期収載品の一部をニプロに譲渡することを発表するなど、GE薬の事業環境変化が企業の経営施策にも大きく影響を及ぼしている。
一方で、2015年6月に策定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」の中で数値目標として掲げられた数量シェア70%の達成期日も今年6月末に迫り、今後は、その進捗状況を踏まえ80%以上の目標時期の設定が進められるのだろう。
ただ、GEは前述のように激しい価格競争にさらされている。また、医療用医薬品全体の1割弱という比較的小さい市場に他分野からの参入や中小零細企業も含めて200社近い企業が参入し、原薬や原料加工物の安定的な確保など、数量シェア80%時代に向けては、まだまだ課題が残る分野とされる。
そうした背景もあり、GE薬産業の体質強化と改革の方向に向けた検討を行う自民党の議員連盟「ジェネリック医薬品の将来を考える会(仮称)」が25日、設立総会を開いた。設立趣旨には高品質の国産GE薬の海外展開も視野も含まれているようだ。
GE薬業界は制度上の問題が複雑に絡むため、一定の政治的な関与も必要なのかもしれない。岐路に立たされるGE薬業界には、企業拡大の方向性のみならず、国民にとってプラスとなるような大きな変化を期待したいところだ。