![会見する持田教授(中央)ら](/pic/2008/headlinenews/hln200802060201.jpg)
会見する持田教授(中央)ら
椎間板の変性は、椎間板の随核部に存在する随核細胞の減少が引き起こすとされ、変性の進行が腰痛や下肢痛の大きな原因になっている。いったん変性が進行すると、元には戻らない非可逆的過程をたどるため、変性の進行を抑え、椎間板を再生させることが治療法の課題となっていた。
持田氏らは、14年前から随核細胞の役割について研究を進めてきた。その結果、これまで不要と考えられてきた随核細胞を変性した椎間板に移植することで、変性が抑制できることを動物実験で見出した。ただ、随核細胞は数が少なく、活性が低いため、椎間板変性の抑制効果が十分でないという問題点があった。
そこで、骨髄間葉系幹細胞の活性化細胞としての役割に着目した。最近は多分化能が注目される骨髄間葉系幹細胞だが、もう一つ活性化細胞の役割を持つことが知られる。この特徴を応用し、随核細胞と骨髄間葉系幹細胞の共培養を試みたところ、5倍以上に随核細胞の活性が高まることが分かった。
実際、活性化させた随核細胞を、変性したイヌの椎間板に移植した結果、変性の進行が抑えられ、ヒトの随核細胞を用いて共培養しても活性化が得られることが分かった。染色体異常や腫瘍化など、安全性にも問題がないと判断し、持田氏らは昨年4月、厚生労働省に臨床試験の実施を申請。11月に了承を得た。
第I相臨床試験の実施に当たっては、安全性を最大限に重視し、腰椎椎間板変性疾患のうち、固定術が適応される20030歳未満の患者に被験者を限定した。臨床試験は3年間の予定で進められ、椎間板のMRI画像の変化を評価する。持田氏は「今年中には10例を目標に移植を進めたい」と話している。