関東地区の国立大学6病院は、国際共同治験の受け入れを視野に「大学病院臨床試験アライアンス(University Hospital Clinical Trial Alliance )」を設立し、本格的な活動を開始した。アライアンスは、従来の治験ネットワークとは違い、高い実績を持つ大学が対等な立場で連携することで、実施体制の効率化、標準化を目指すというもの。世界同時開発への乗り遅れが指摘される中、実施医療機関側が問題意識を共有し、具体的な行動を開始した意味は小さくない。今後アライアンスでは、製薬企業の協力を得ながら国際共同治験の誘致を進め、早ければ来年夏頃には世界同時開発に参画していきたい考えだ。
世界の医薬品開発は、各国での治験から世界同時開発、国際共同治験の流れに大きくシフトしている。既にグローバルタイムラインやコスト削減を遵守できなければ、世界の流れから取り残されるのは確実な状況になってきた。最近はアジアの中でも「日本外し」が顕著になっていると危惧され、数年前に叫ばれた治験の空洞化が、世界同時開発をきっかけに再燃し始めている。
これまでも製薬業界からは、様々な場で危機感が示されてきたが、実施医療機関側こそ新しい動きに対応する必要がある。こうした問題意識から、関東地区で高い治験実績を持つ国立大学6病院(東京大学、群馬大学、千葉大学、筑波大学、東京医科歯科大学、新潟大学)が結集し、実施体制の整備を開始した。具体的には、広報、推進、事務手続き、審査支援、安全性報告、教育””の6つの作業班を設け、検討を進めてきた。
今回のアライアンス結成について、実務を担当する6大学病院関係者は、「国立大学病院が実施体制を標準化、統一化する方向で連携したい」「国際共同治験のブレイクスルーになるように積極的に取り組みたい」「個別対応だった治験の対応を面という形で解決していきたい」と意気込みを語っている。
これまでも大学病院ネットワーク、地域治験ネットワーク等、全国で数々の連携が試みられてきたが、成功例はほとんどなかったと言っていい。その点でアライアンスは、理念と実績が共通する国立大学病院が、対等な立場で連携するという意味で、過去の取り組みとは一線を画している。これら実施医療機関の共同作業で効率化・標準化を進めながら、製薬企業側と連携している点も大きな特徴である。