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協和発酵の松田譲社長は本紙のインタビューに応じ、キリンファーマとの合併を決断した心境を語った。その中で松田社長は、「私なりに創薬に関わってきた経験と反省が決断を後押しした」と振り返り、「抗体医薬でトップを狙うためには、スピード感がなければグローバルで成長できない」との考えに基づく提携劇だったと明かした。その上で、「攻めの姿勢で世界に通用する新薬を出し続け、価値観を共有する両社のシナジーで力強く成長していきたい」と述べ、グローバル・スペシャリティー・ファーマを目指す意欲を強調した。
キリンファーマとの合併に当たって、松田社長は「新薬をどれだけ出し続けることができるか、海外で展開できるかを考えたとき、果たして単独でやっていけるかどうかが課題だった」と振り返る一方で、抗体医薬などバイオ医薬品への関心が急速に高まっているとの認識があった。実際、昨年の抗体医薬市場は2兆2000億円に上るとされ、2011年には4兆5000億円に拡大すると見られる。
こうした中、協和発酵は抗体の活性を100倍以上高めるポテリジェント、キリンファーマはヒト抗体を作るKMマウスという強い技術を持っていた。松田社長は「協和発酵の優位性を生かし、キリンファーマと目指す方向性が近いのであれば、今こそ一緒に戦うことで、二つの課題を解決できるのではないかと考えた」と決断の背景を語る。
そのカギはスピードだ。抗体活性を100倍以上高めるポテリジェント技術とヒト化抗体を作るKMマウス技術の融合で、研究開発の効率とスピードが飛躍的に向上することが期待できる。松田社長も「創薬力アップが合併の最大のカギ」と話している。
松田社長がスピードに強くこだわるのは、自らの創薬経験に基づく反省が大きな背景にある。協和発酵は80年代から米国のバイオベンチャーと積極的に提携し、共に創薬力を競ってきた。しかし、数年後に大きな成長を遂げたのは米国の企業だった。
実際、ジェネンテックやアムジェンといった米国のバイオ企業は、数少ないブロックバスターで飛躍的な成長が可能なことを証明した。当時の経験から松田社長は、「創薬力では決して劣っていないという自信があった」としながらも、「なぜ急速な成長を遂げられないかと言えば、スピード感と事業性意識がなかったのではないか」と反省点を振り返る。
その上で「抗体医薬でトップを狙うならば、スピード感がなければグローバルで大きく成長できない。そこをキリンファーマと一緒に果敢に攻めれば、我々も成長できるチャンスはあるのではないかという、私なりの創薬に関わってきた経験が決断を後押しした部分はある」と強調した。
そのため、さらなる技術革新に向け、第二世代の抗体医薬と位置づけるポテリジェント技術のライセンス契約も積極的に進めていく考えだ。既に10社とポテリジェント技術のライセンス契約を締結済みで、「ポテリジェント抗体」として自社の抗CCR4抗体「KW”0761」、海外ではメドイミューンの抗IL”5受容体抗体「BIW”8405」、メダレクスの抗CD30抗体「MDX”1401」が臨床試験段階にある。
松田社長は、「開発の成功確率を上げること、リスクを分散させるという二つの視点がある」とライセンス契約の意義を説明。「強いパートナーと組んで成功確率を上げ、外部の資金力を取り込み、スピード感をもって、我々が目指す姿に到達しなければ、欧米の企業に負けてしまう」とする。
協和発酵は、80年代にモノクローナル抗体が下火になった時も研究を継続し、結果的にポテリジェントという革新的な技術を手にした。松田社長は、「技術先行の部分が協和発酵の特徴と言えるが、キリンファーマも同じ価値観を持っていて、両社ともイノベーションを起こそうという意欲は非常に高い」と述べ、攻めの姿勢で臨む決意を改めて強調した。
ただ、今回の提携に対して、市場の評価は定まっていないのが現状。松田社長は、「やむを得ない面もある」とした上で、「キリンファーマは非上場なので、まだ評価が行き届いておらず、正しく統合の意義を理解されていない面があるのではないか」との見方を示した。4月末には、新生「協和発酵キリン」として、第10次中期経営計画を発表する。「その中で説明責任を果たし、積極的な情報公開によって市場の評価が高まると確信している」と企業価値の向上に自信を示している。
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