中央社会保険医療協議会は30日の総会で、来年4月から実施する新しい薬価算定ルールを決めた。より有用性が高い新薬などに対する加算率の引き上げと、市場拡大再算定の適用拡大が柱。総会には薬価算定組織から、新しいルールに基づく市場拡大再算定品目が報告され、AII受容体拮抗型降圧薬、SSRI(抗うつ薬)など11成分30品目が了承された。
イノベーションを評価
総会には、「2008年度実施の薬価算定基準等の見直し案」が報告され、了承された。政府方針である新薬のイノベーションの評価と社会保障関連予算の伸びの抑制を反映した内容となった。
イノベーションの評価では、新しい作用を持ち、既存の医薬品より高い有効性を有する新薬に対する「画期性加算」について、加算率を70~120%と、現行より20ポイント引き上げた。それに次ぐような新薬の有用性加算の引き上げも図り、「有用性加算I」は35~60%(現行25~40%)、「有用性加算II」は5~30%(同5~20%)となった。
小児薬の開発促進も狙い、小児加算も「比較薬が小児加算の適用を受けていない」ことを条件に、加算率5~20%(同3~10%)を適用することになった。そのほか市場性加算、キット加算(要件は厳格化)も引き上げた。
類似薬効比較方式で算定される場合、比較する類似薬を原則として「過去10年間に薬価収載されたものであって、当該新薬算定最類似薬にかかる後発品が薬価収載されてない」ものとすることに改めた。薬価が低くなった古い薬剤と比較すると、算定される薬価も低くなり、外国平均価格よりも低くなる現状を改善するのが狙いだ。
一方、社会保障関連予算の伸びの抑制などに絡み、市場拡大再算定の適用拡大や、後発品が初めて収載された先発品(長期収載品)を追加的に「4~6%」引き下げる、特例引き下げも実施することになった。最低薬価も引き下げる。
再算定ルールの見直しでは、現行ルールでは、再算定の対象品と同じ薬理作用類似薬でも、適用を受けるものと受けないものとの不公平があったとして、対象品と同じ薬理作用類似薬全てに適用できるようした。
ただ、来年度に限り[1]再算定による引き下げ率と市場実勢価から計算される改定率の平均値を引き下げ幅とする[2]同再算定で補正加算が付く薬剤については、傾斜配分した引き下げ率と[1]のいずれか小さい方を改定率とする””という激変緩和措置を適用する。
総会で了承された市場拡大再算定品目は11成分30品目。AII受容体拮抗型降圧薬(ARB)6成分16品目、SSRI(抗うつ薬)3成分8品目、TNF阻害型抗リウマチ薬(遺伝子組換えインフリキシマブ)1成分1品目、免疫抑制剤(タクロリムス)1成分5品目。厚労省は引き下げ幅は明かしていない。
ARB、インフリキシマブは市販後の臨床試験で、真の有用性が検証されているいるとして、ARBは7.5%、インフリキシマブは5%をそれぞれ補正加算し、下げ幅を緩和した。
最低薬価が引き下げられるものは次の通り。
【局方品】散剤、顆粒剤、末剤8.40円(現行9.70円)、坐剤20.80円(21.40円)
【その他の医薬品】錠剤、カプセル剤、丸剤6.10円(6.40円)、散剤、顆粒剤、末剤6.30円(6.40円)、注射剤60円(64円)、坐剤20.40円(21.40円)、点眼剤84.80円(85.60円)、外用液剤6.30円(6.40円)
また、同日の総会では、来年度実施の新しい保険医療材料制度も決めた。主なものとしては、小型化、軽量化による小児適用が可能になった場合や低侵襲になったケースなどを「改良加算」(加算率)として新設したことや、外国価格との調整では、算定価格が外国平均価格の1.7倍(現行2倍)を上回る場合に行うことに改めた。