世界で初めて発売された新薬が、日本で発売されるまでに平均3.9年かかることが、日本製薬工業協会の医薬産業政策研究所の福原浩行主任研究員の調べで分かった。原因として日本での治験期間の長さ、治験開始時期の遅さを指摘した。
これは研究報告書「医薬品の世界初上市から各国における上市までの期間―日本の医薬品へのアクセス改善に向けて―」にまとめられたもの。
それによると、新薬が世界に行き渡るスピードは年々早まり、1990年代には30カ国で発売されるまでに平均1年半04年かかっていたが、2000年代は約102年と、国によるバラツキも少なくなってきている。製薬企業の国際開発・販売体制の整備が背景にあるという。
しかし、世界で初めて発売された新薬が日本で発売されるまでの期間は伸びていることが示唆される結果となった。1994年で売り上げ上位33製品について調べたところ、日本発売まで平均2.8年と、スイスやフランスより早く、米国やスウェーデンなどと肩を並べていた。
それが、2004年で売り上げ上位88製品について調べた結果では、単純比較はできないものの、04年は3.9年となり、世界で38位だった。
その原因としては、承認審査期間については改善しつつあり「遅延の決定的要因とは考えがたい」とし、治験期間の長さ、治験開始時期の遅さを指摘。売り上げ上位88製品のうち日本承認申請中の15製品をみると、当該製品が世界で初めて発売された日から日本の承認申請までに平均5.8年かかっており、「承認申請までのプロセスで時間がかかり、上市の遅延に大きな影響を与えていることが推察される」と理由を説明した。
改善策として、参加治験開始時期については、研究開発投資を売り上げ拡大により早く回収できるという当該国のビジネス的な魅力の有無にも左右されると指摘し、治験費用の低減や価値の高さを反映した薬価の設定の実現を求めた。
また、開発スピードアップに寄与しているという国際共同治験に参加できる環境づくりも必要だとした。
なお、発売が早い上位3国は米、英、スイス。米国を基準にすると、この3国に発売時期のラグがない。その中で米は94年の9位から04年にはトップとなったが、その理由として、「世界最大の市場規模で、90年代後半以降、非常に高い市場成長率を維持していることに加え、先発医薬品の特許期間が満了すると、短期間のうちに市場がジェネリック医薬品に奪われるという市場特性」を挙げ、各企業が米国市場を優先するようになったとの見方を示している。