2011年度をメドに、社会保障カードの導入、運営などを検討している厚生労働省の「社会保障カード(仮称)のあり方に関する検討会」は、カード導入に当たっての基本的構想や今後の検討課題についての報告書をまとめた。当面はカードが持つべき機能を、年金手帳や健康保険証、介護保険被保険者証に限定する。また、セキュリティ対策を徹底した上でカードに記録した年金記録や特定健診、レセプトなどの情報を自宅のパソコンから閲覧できるようにするなど、将来的には用途拡大を図っていく方針を示した。
社会保障カード構想は、[1]利用者の利便性向上と保険者・サービス提供者等の事務効率化を図る[2]プライバシー侵害、情報の一元的管理に対する不安が極力解消される仕組みにする[3]コストを抑えつつ、より多くの効果を実現する、費用対効果に優れた仕組みとする””を、基本的な考え方としている。
構想では、年金手帳、健康保険証、介護保険証を1枚のカードにすることで、▽保険、携帯に便利で発行事務負担も軽減される▽ICカードにすることでプライバシー保護に優れている▽保険証の再取得等が不要▽医療機関等の窓口の資格確認が可能▽保険証の情報転記ミスがなくなる””などのメリットがあるとしている。
また、利用者の不安解消やプライバシー保護のために、カードには氏名、発行者など最低限の情報を記載すると共に、安全性に優れたICカードを導入することを勧めている。ただ、希望者には顔写真を付け、身分証明書としても利用できるようにすることも検討する。
さらに、将来的なカード記載情報として、特定健診やレセプトなどの情報を挙げているが、「極めて機微な情報」であるため、ICチップをカードに搭載すると共に、オンライン上で本人確認を厳格に行うようにし、成りすましを防止する仕組みを、今後検討していくことが必要としている。
カードに載せる機能については、将来的に雇用保険や労災保険など、他の社会保障分野での利用や閲覧が可能となるよう用途を拡大していく。
ただ、これらの情報を閲覧するためには、加入者本人かどうかを特定するための鍵となる情報をカードに収録し、その情報をもとにアクセスする仕組みが必要となることなどを課題として示した。
カードに収載する鍵となる情報については、[1]各制度共通の統一番号を利用する[2]個人に番号を付与するのではなくカードの識別子を利用する[3]各制度の現在の被保険者番号を利用する[4]基本4情報(氏名、生年月日、性別、住所)――の4案が選択肢として挙げられており、引き続き検討していくことを求めている。
なお、カードの交付主体・交付方法は、[1]市町村、[2]医療保険者、[3]年金保険者たる国が交付――する案が示されており、引き続き検討する。