2007年の献血血液を検査した結果、HIV抗体陽性者が過去最多の100人、献血者10万人に当たり2.0人をそれぞれ超える見通しとなった。陽性血液は全て廃棄され、使用されていないが、ウイルス検査の最終関門で、最も高感度のNAT(核酸増幅検査)で初めて陽性と判明したケースは、例年より数倍多い6人に上り(昨年12月27日現在)、ウイルスが検査をすり抜ける危険性が高まった。採血を行う日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所の田所憲治所長は「07年は異常事態」と話し、日赤は検査目的の献血は絶対に止めるよう呼びかけることを全国の血液センターに指示した。
献血は年間約500万人が行っている。日赤は、献血血液に対し、エイズや肝炎などウイルスの混入を防ぐため抗体検査のほか、遺伝子レベルでウイスルの存在を確かめるNAT検査を行っている。
しかし、国内のエイズ患者・HIV感染者の広がり、高感度検査を実施したことによる検査目的の献血者の増加などで、献血血液のHIV抗体陽性率は増加傾向にある。
厚生労働省のまとめでは、1999年から10万人当たり1.0人を超え、05年にはやや減ったものの、概ね増加傾向で、06年は1.744人。陽性者数は87人で、20代、30代の男性に多い。
それが07年は、公表されている1月から9月までの速報値で、10万人当たり1.981人。実数にして73人。
年間ベースでは、日赤の田所所長によると、11月末段階で10万人当たり2.0人を超え、陽性者数は100人を超える見通し。感染初期のため抗体検査では技術上の限界で陰性を示したが、NATで初めて陽性となった者も6人に上った。例年は102人であり、数倍だ。
田所所長は、本紙などに「(陽性件数が)急激に増え、07年は異常事態だ。特にNATで初めて陽性となった件数も例年に比べ多く、ウイルスを混入した血液が検査をすり抜ける危険性を感じる」と語った。
日赤は、検査目的の献血は絶対に止めるよう呼びかけることを、全国の血液センターに指示しているが、田所所長は「献血に来られた方を排除することは難しいので、HIV検査体制の整備が必要だ」と、検査を受けやすい体制づくりの必要性を訴えた。
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