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“人間力”が試される年

2008年01月09日 (水)

 2008年を迎えた。昨年末に、診療報酬本体が8年ぶりのプライス改定となったが、薬価を含めると全体ではマイナス改定となった。一方、医療の現場は、今年は大変革が本格化する。医療制度改革の新医療計画、医療費適正化計画、後期高齢者医療制度などが、この4月から実施される。また、一般薬の新しい販売の専門家である登録販売者の試験も、来年度の制度本格施行を前に、今年から実施される。

 診療報酬改定は本体がプラス0・38%(調剤は0・17%)と、わずかに引き上げられた。国の財政状況が厳しい中で小幅となったが、薬価は1・1%(薬価ベース5・2%)引き下げられ、全体ではマイナス0・82%と、4回連続の引き下げが敢行される。薬局としては、技術料が引き上げられたといっても、薬剤費が引き下げられたことから、報酬面からは今後も厳しい薬局経営が迫られることになる。

 医療制度改革に目を転じると、薬局が医療提供施設として位置づけられ、地域完結型医療を目指す医療連携を柱とし、各都道府県で策定される新医療計画への参加が必須になっている。

 また、診療報酬改定では、DPC対象病院の拡大は見送られたが、包括払い方式を進めなくてはならない現在、急性期入院と回復期・慢性期入院、外来、在宅といった一連の医療提供の流れの明確化が図られていくことには間違いない。その中での新医療計画の位置づけや、そこにどう薬局が食い込めるかなど、今後の課題となるだろう。

 さらに、医療費適正化計画では、今年4月から5年間は、「平均在院日数の短縮」と「生活習慣病予防の徹底」の二つに焦点を当てた取り組みが展開される。

 生活習慣病の予防では、今年度から各保険者に糖尿病などのハイリスク群に対する特定健診・特定保健指導が義務づけられる。特定保健指導の実施者に薬剤師は位置づけられなかったが、薬局は地域で「健康日本21」などの実績を積み重ねているところが多いのではないか。側面からメタボリックシンドロームの予防を支援できるはずで、それが実績として次につながっていくことを考えると、着実な取り組みが求められる。

 「平均在院日数短縮」は、何と言っても、療養病床再編が目玉だ。2012年3月までに、介護型療養病床13万床を廃止し、医療型療養病床25万床を15万床にする。今年度からこの施策は開始されているものの、まだ各医療機関は様子見といった感が強いが、今年度からはそうはいってられないだろう。経過措置が設けられてはいるが、介護施設の整備や、在宅医療体制の整備は急務となる。

 一方、75歳以上を対象とした後期高齢者医療制度も今年度からスタートする。新しい診療報酬は現行の体系に組み込まれるが、薬局には「お薬手帳」を有効活用した服薬管理・指導の徹底が求められている。療養病床再編の中、高齢者患者の多くが在宅や介護施設などに流れるのは必至だ。薬局がどのようにこれらに対応できるのか、世の人々は見ているに違いない。

 そのほか、後発品の使用促進での、情報提供の義務化や後発品調剤の努力義務化。さらに、新しい医薬品販売制度下での薬剤師の役割など課題は山積している。

 こうした流れを見ていると、「在宅」「対面」などがキーワードになっているように感じられる。これからの薬局・薬剤師は、医薬品の安定供給という従来の面だけでなく、人とどのように接し、それをどう医療の中で反映させていくのかが問われているのかもしれない。

 今年は、ひと頃いわれた“人間力”を磨く時期かもしれない。努力を怠らない姿勢が必要だ。



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