厚生労働省の2008年度予算案(当初内示)では、「革新的医薬品・医療機器の創出」のための予算として、省全体の07年度からの伸びを上回る3.6%増の256億円を計上し、バイオマーカーなど新技術の研究開発支援や再生医療、治験・臨床研究の拠点整備、国際共同治験の充実強化などを盛り込んだ。政府の重要課題となっている肝炎対策は、高額なインターフェロン治療への医療費助成を盛り込み07年度より2.7倍の増額。疲弊する産科、小児科、病院勤務医の過重労働など医師確保対策には1.7倍増の予算を確保した。政策課題に対し重点配分した予算案となった。
20日に示された財務省原案段階で、政府予算案の一般歳出の伸び率は0.7%。その中で厚生労働省分は3.0%増の22兆1179億円を計上した。その4割を占める医療分野は8兆5644億円(1.6%増)、年金は7兆4375億円(5.8%増)、介護は1兆9062億円(2.2%減)。
同省は、政府方針の「革新的医薬品・医療機器創出のための5カ年戦略」に基づき295億円を要求したのに対し、256億円が認められた。その多くは、新薬開発にも有用なバイオマーカーやマイクロドーズなどの新技術の研究開発支援を行う「医薬品・医療機器に関する研究費の重点化・拡充」で、239億円を充てる。
新たに、アジア地域と連携や治験相談から承認の体制整備を視野に置いた国際共同治験の充実強化に取り組むとし、5500万円を用意。ベンチャー企業に対する治験・承認申請など薬事面の相談体制の整備に3600万円を計上した。
治験拠点病院のCRCの配置など「治験・臨床研究の充実のための拠点整備」「CRCやデータマネジャーの養成」はそれぞれ7.6億円、8900万円と、それぞれ要求額通り。
新規項目の「再生医療を推進するための拠点整備」も要求額どおり4.1億円が認められた。再生医療の技術者の養成、民間への技術移転を推進する実施拠点を構築するために用いる。
政府の重要課題となっている肝炎対策は、高額なインターフェロン治療への医療費助成に129億円を用意するなど、ウイルス検査体制、拠点医療機関の整備などの整備を盛り込み07年度より2.7倍の207億円を確保した。
癌対策には11%増の236億円を計上し、化学療法や放射線療法の医療専門スタッフ育成や、拠点病院の機能強化などに取り組む方針を示した。
社会問題化している病院勤務医の過重労働などに対する医師確保対策費としては、疲弊する小児科、産科など、交替制勤務導入病院への補助や小児救急医療体制の確保のため、1.7倍増の161億円を充てる。
今日21日から、計上されなかった予算項目の復活折衝が始まる。「革新的医薬品・医療機器の創出」分野では、新規項目として15億円を要求していた「医療クラスター」(仮称)が復活案件。中核的な医療機関を中心に、産学官が連携して基礎研究から臨床研究への応用を進めるものだ。
予算案は24日に閣議決定される。
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