TOP > HEADLINE NEWS ∨ 

【理研】RNA干渉で新発見”「ダンベル構造」でRNA干渉効果を長期安定化

2007年12月21日 (金)

関連検索: 理化学研究所 RNA干渉

■医薬品開発応用に大きな期待

 医薬品開発技術として注目されているRNA干渉技術で、世界的な課題となっていた遺伝子発現抑制効果の長期化に、理化学研究所の研究チームが成功した。理研伊藤ナノ医工学研究室の阿部洋研究員らの成果で、天然型RNA分子を化学合成し、「ダンベル型」構造にすることで、長期的な抑制効果が得られた。また、この技術では、人工RNAが抱える毒性やRNA干渉効果の低減といった問題点も解決されることから、RNA干渉法による医薬品開発に貢献するものと期待される。

 RNA干渉は、二本鎖RNAを細胞内に加えると、結果的に片方のRNAと同じ塩基配列を持つ細胞内メッセンジャーRNA(mRNA)が特異的に分解される現象。mRNAが分解されるため、それがコードしている蛋白質も発現しなくなる。この方法を用いれば、標的遺伝子発現を抑制することが可能で、癌や感染症の原因遺伝子配列が分かれば、その配列を標的としてRNA干渉を引き起こすことにより、疾病の有効な治療法となる。

 また、二十数塩基対の短い二本鎖RNAが、特異性・効果ともに高いことが知られるようになり現在、日米欧で官民を挙げて、RNA干渉技術を利用した医薬品開発競争が展開されているが、日本の研究開発は後れているのが現状。

 RNA干渉技術としては、天然RNA分子を産生する方法と、化学合成した二本鎖RNAを用いる方法に大別される。天然型は安定性に問題を残し、通常、医薬品開発に用いられる化学合成型は、天然型に比べ効果が低減し、生体に与える毒性も未知であるとの課題があり、創薬への応用を難しくしていた。

 こうした課題を解決するため同研究チームは、天然型RNA分子をダンベル型構造にすることで、分解酵素などの攻撃を受けず、エンドレスな構造にさせ生体内での安定性を確保、長期的なRNA干渉効果を発揮させることに成功した。

 このRNAは、化学合成した環状の一本鎖RNA(50060塩基)からなり、二つのループ部分(ダンベルの重りの部分)とステム部分(ダンベルの手で持つ部分)からなる。ダンベルRNAは、それ自体に干渉効果はないが、ヒト細胞内に存在する酵素のダイサーによって切断され、ステム部分の20塩基ほどの二本鎖RNAが効果を引き起こす。

 研究チームでは、安定性を見るため、分解酵素を使った試験管内の実験を行ったところ、1時間後、従来の二本鎖RNAの残存率は10%以下に対し、ダンベル型RNAは70%以上が残存し、安定性が確認された。

 一方、ヒト細胞中でのRNA干渉効果を見たところ、1日後、3日後では従来の二本鎖RNAと同レベルだったものの、5日後は1・5倍の遺伝子発現抑制効果が示された。

 研究チームは今回の成果を、「二本鎖RNA分子の両端を結び、ダンベル構造を作るだけで、RNA分子を安定化できることを明らかにした重大な発見」とし、これにより今後、RNA医薬品を分子設計する際に、極めて有用な指針になるとしている。

関連リンク

関連検索: 理化学研究所 RNA干渉



‐AD‐

この記事と同じカテゴリーの新着記事

HEADLINE NEWS
ヘルスデーニュース‐FDA関連‐
新薬・新製品情報
人事・組織
無季言
社説
企画
訃報
寄稿
新着記事
年月別 全記事一覧
アカウント・RSS
RSSRSS
お知らせ
薬学生向け情報
書籍・電子メディア
書籍 訂正・追加情報
製品・サービス等
薬事日報 NEWSmart
「剤形写真」「患者服薬指導説明文」データライセンス販売
FINE PHOTO DI/FINE PHOTO DI PLUS
新聞速効活用術