中央社会保険医療協議会は14日に開いた総会で、薬価制度改革、保険医療材料制度改革、後発品使用促進のための環境整備の来年度の方針を示した骨子を了承した。薬価制度改革で業界に大きく影響するのが、より効果の優れた新薬を評価するため、算定薬価に上乗せする補正加算の加算率引き上げと、当初の予想より売り上げが大幅に伸びた医薬品の薬価を引き下げる市場拡大再算定の対象範囲の拡大。再算定見直し案は、業界側からの「厳しい」との意見も踏まえ、当初案が修正され、来年度限りで激変緩和ルールが導入されることになった。後発品が初めて収載された先発品(長期収載品)の特例引き下げも実施。通常改定率に「4~6%」の追加引き下げを行うことが盛り込まれた。
薬価制度改革は、薬価算定ルールを見直し、政府方針通り新薬の革新性をより評価すると共に、薬剤費の適正化を図っていく。来年度予算で社会保障関連予算の2200億円削減方針と絡み、薬価制度改革や後発品使用促進でどの程度の捻出となるかが焦点の一つ。薬価調査に基づく通常改定が4.5%の引き下げ(薬価ベース)、医療費ベースで1%程度に当たる。今回示された再算定見直しや長期収載品の特例引き下げなどを加えた影響率(額)について厚生労働省保険局医療課は、「集計中」として明かしていない。
今回の「市場拡大再算定」の見直し案は第1弾で、次々回の薬価制度改革に向け、算定要件を大幅に見直すことも提案した。
現行では、市場拡大再算定は、対象製品とその比較薬について実施されている。しかし比較薬でなければ、再算定には該当せず、同省は「市場で競合している医薬品について公平な薬価改定を行う観点から」見直しが必要と判断。
まずは「比較薬」であったかどうかにかかわらず、再算定対象薬の薬理作用類似薬全てを対象に含めることを、今回の制度改革として実施することになった。薬理作用類似薬かどうかの判断は、「類似薬選定のための薬剤分類」に従うことになるとみられる。
また、市販後の臨床試験などで、より確かな有用性が検証された場合などは引き下げ幅を緩和する「補正加算」の仕組みに対して、傾斜配分を1日薬価ではなく、市場規模で行うことも実施することになった。これは1日薬価が低くても、市場規模が大きい薬剤を考慮したもので、補正加算による再算定の歯止めが大幅に小さくなるケースも出てくる。
これらは11月の当初案(たたき台)で示され、市場拡大再算定ルールそのものの廃止を求める業界側は改悪だとして猛反発した。
それを受け今回の骨子には、来年度限りとして激変緩和ルールの導入を盛り込んだ。具体的には、[1]再算定による引下率と市場実勢価から計算される改定率の平均値を引下幅とする[2]同再算定で補正加算が付く薬剤については、傾斜配分した引下率――のいずれか小さい方を用いる。
また、第2弾で取り組むべき残された市場拡大再算定の課題については、業界の反発を踏まえ「例示」扱いにとどめ、「次々期薬価制度改革までに検討」と明記した。
例示されたのは、再算定の対象にする際の判断基準の一つとなっている「効能追加」の有無の取り扱いのほか、販売後10年以内の薬剤だけでなく、販売後10年を超えた薬剤も「毎年一定割合以上販売額が増加する場合」も対象に含め、対象を広げるというもの。
そのほか今回の制度改革では、最低薬価の引き下げも提案した。
小児加算引き上げ
一方、新規収載品算定ルール見直しの目玉は、類似薬効比較方式での補正加算の引き上げ。提案によると、最も優れた新薬を評価する「画期性加算」の加算率を「70%~120%」と現行より20%引き上げる。それに次ぐ評価となる「有用性加算I」は「35%~60%」(現行25%~40%)、最も算定が多い「同II」は「5%~30%」(5%~20%)。IIの加算要件に「臨床上有用な新規の作用機序を有すること」が加わる。
小児用法・用量を持つ薬剤を評価する「小児加算」は「5%~20%」(3%~10%)で、加算要件は緩和する。希少疾病用医薬品など市場が小さい医薬品を評価する「市場性加算I」は「10%~20%」(10%)、「同II」は「5%」(3%)。キット加算は「5%」(3%)とするが、「キットの構造や機能に新規性が認められるものに限る」と要件を厳格化する。
原価計算方式では、薬価算定で織り込んでいた営業利益率19.2%を、対象新薬の革新性や有効性、安全性に応じて±50%の範囲に見直す。
そのほか、来年度以降の課題として、新しい薬価制度、薬価改定の頻度、後発品の収載頻度などが盛り込まれた。