エーザイは10日、癌領域に強い米バイオ企業のMGIファーマを約39億ドル(約4300億円)で買収すると発表した。癌領域を最重点領域に掲げる同社は、今回の買収によって低分子医薬から支持療法まで、あらゆる開発パイプラインを確保し、米国でアリセプト特許切れの影響を受ける2012年度以降も持続的な成長を続けたい考え。同日会見した内藤晴夫社長は、「中期戦略計画ドラマティック・リープ・プラン(DLP)に掲げる11年度の売上高1兆円の達成に自信を持っている」と語り、目標実現に向けた強い決意を示した。
癌領域の重点テーマ化を進める同社は、昨年10月に米ライガンド社の抗癌剤4品目の戦略的買収を行い、さらに今年4月には、独自のヒト抗体技術を持つ米モルフォテック社を買収するなど、矢継ぎ早に癌領域の強化を図ってきた。
MGIファーマは、癌化学療法にによる悪心、嘔吐を適応とする「アロキシ」、骨髄異形成症候群治療剤「ダコジェン」などを保有し、細胞分化誘導剤、DNAワクチンなど、開発パイプラインも同社と競合しないことから、今回の買収に至ったもの。
内藤社長も「癌領域へのあらゆるアプローチが可能となることが買収のポイントで、開発テーマが競合していないため、大きなシナジーを遂げることができる」と語った。
また同社は、中期戦略計画において、2011年度に米国で売上高4400億円、全体売上高1兆円を掲げているが、10年には米国でアルツハイマー病治療薬「アリセプト」の特許切れを控えており、その影響が不安要素となっていた。
内藤社長は、「今回の買収で、癌領域の充実したパイプラインがアリセプトの特許切れを十分に克服し、12年度以降の事案を乗り越えることができる」と目標達成に強い自信を示した。その上で、「自社で一部の癌領域の開発品を取り込んでいるだけで、製薬企業として満足していいのか。責任を果たせたと言えるのか」と自社開発の限界を指摘。「患者さんへの貢献度を上げる意味でも、今後も他社の技術を取り入れる選択肢も入ってくる」と述べ、さらなる買収に含みを持たせた。
今回の契約締結に基づき、エーザイはMGI社の発行済み株式を1株当たり約41ドル(約4100円)で取得する公開買い付け(TOB)を実施し、2008年第一四半期には買収手続きを完了させる予定にしている。
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