ムンディファーマの木村龍也社長は、本紙のインタビューに応じ、2010年に上市予定の経皮吸収型オピオイド系鎮痛薬「ノルスパン」を、「必ず成功させなければならない製品」と位置づけ、早期の上市とマーケティング体制の強化を最優先課題として取り組んでいくと語った。ノルスパンは、同社が初めて製造販売承認を取得する製品となるだけに、「計画通りに承認を取得し、久光製薬と上市することにより、製薬企業としてのプレゼンスをさらに高めたい」と、意欲を示した。
02年に日本での活動をスタートさせた同社は、疼痛治療領域に特化した事業展開を進めているスペシャリティーファーマ。これまでは、癌疼痛領域を中心にMSコンチン錠、オキシコンチン錠を導出し、塩野義製薬と共にマーケティング活動を行ってきた。
次のステップとして、非癌性疼痛領域の開拓を見据えている。現在、最も力を入れているのがノルスパンで、腰痛や変形性関節症の疼痛をオピオイド系鎮痛薬によってコントロールするという意味で、革新性の高い薬剤となる可能性がある。
木村社長は、「ビジネス的にノルスパンがマイルストーンに近づいているので、今後のビジネスの成功のために社内体制を強化することが最大の課題」と強調する。また、将来のビジネス展開を見据えた組織変更、開発パイプラインの充実も急務となっている。
木村社長は「少なくとも開発を開始した時点でマーケティングは始まっている」とし、「マーケティングの部分を強化して、パートナー企業と積極的に活動すれば、効果はさらに上がる」と指摘。今後、オピオイド系鎮痛薬の啓蒙活動も含めたマーケティング戦略を重視していく考えだ。
これまでオピオイド系鎮痛薬による疼痛コントロールは、癌性疼痛が中心であったが、同社が新しいビジネス領域として注目する非癌性疼痛領域は、腰痛、変形性関節症など整形外科領域の痛みがターゲット。これまで整形外科領域の痛みに対しての薬物療法は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などしか治療手段がなかった。
木村社長は「NSAIDsが中心だった整形外科領域に対しても、オピオイド系鎮痛薬のノルスパンの登場によって、疼痛コントロールの幅が劇的に広がり、画期的な存在になる」と自信を示す。
現在、ノルスパンは第III相試験の結果待ちだが、有望な結果が得られた場合、早ければ来年にも承認申請を行う予定だ。その上で、短期的なビジョンについて、「今後2年ぐらいは、非癌性疼痛領域のノルスパンに集中した事業を展開していくと共に、これから臨床開発に入る抗癌剤の開発に傾注していく」との方針を徹底する考えだ。
ノルスパンの上市は、同社にとって今後を占う大きな試金石。木村社長は、「やっと製薬企業としての仲間入りを果たせるとも言えるが、それだけ責任も出てくる。そういう大きな転換期の中で、どれだけインパクトの高い製品を持っているかが勝負となる。私たちは典型的なスペシャリティーファーマだと自負しているが、患者さんにとって本当に価値のある薬剤を世に出すという意味で、存在感のある企業になっていきたい」と話している。