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第28回日本臨床薬理学会年会が28日、宇都宮市の栃木県総合文化センターで開かれた。シンポジウムでは、ジェネリック医薬品(GE薬)の科学的な検証をめぐって議論が行われたが、なお医療現場での信頼性確保と、正しい情報発信が大きな課題になっていることが浮き彫りになった。
米国神経学会は4月に、「抗てんかん薬のGE薬への切り替えは、医師と患者の同意がなければやってはならない」とする立場を表明した。その理由として、米国FDAは先発品とGE薬との大きな違いを許しているが、てんかん患者によっては、成分の違いがわずかでも、治療結果に大きな違いが出る可能性があることを挙げている。
一方、日本ではGE薬の効能・効果、用法・用量が同一であると説明されているが、内田英二氏(昭和大学第二薬理学)は、「そこまで言い切っていいのか」と疑問を投げかけた。
実際、内田氏が添付文書の記載を検討してみると、気管支拡張薬ジプロフィリン注のGE薬のうち、静注不可の製品が存在するなど、用法に違いのあることが分かった。また、抗真菌薬イトリゾールのGE薬には、爪カンジダ症、カンジダ性爪囲爪炎といった先発品の適応症がない製品もあり、効能にも違いのあることが判明した。
さらに、チクロピジン、グリペンクラミド、クラリスロマイシンなどで、複数のGE薬の添付文書を比較した結果、薬物動態パラメータ値が先発品と比べて4倍近い差があったことから、内田氏は「日本人で約4倍の違いは臨床薬理学的に認められない」と問題視。「先発品からGE薬に切り替えたときの血中濃度が予測できないというのが現場の実感」と話した。
その上で、「治療域が狭い医薬品に関しては、同じであるという理解のみでGE薬を処方するのは、現場としては危険だ」と注意喚起した。
GE薬をめぐる大きな動きとしては、医師が処方せんに“変更不可”と署名しない限り、先発品が投与されないという処方せん様式の変更がある。ただ、現在の生物学的同等性試験は、あくまでも先発品との比較。GE薬間の同等性は科学的に保証されていないのが現状で、この問題をどう解決するかも今後の大きな課題になってきそうだ。
これらの検討を踏まえて内田氏は、「医療現場でGE薬がより使われるためには、医療現場でGE薬に対する信頼性を確保することが最も必要」との考えを示し、GE薬業界、行政、医師、薬剤師、患者が正確な情報を発信・共有することが最初のステップになると提言した。
一方、政田幹夫氏(福井大学病院薬剤部)は、米国でのGE薬をめぐる大論争の歴史を例に挙げながら、FDAが有効性・安全性を保証し、承認しているという審査体制の違いを指摘した。現行の審査体制に関しては、先発品を審査する人員でさえ、日本と米国で約10倍の開きがあり、GE薬の審査体制はさらに貧弱な状況にある。そのため政田氏は、米国並みの審査体制の充実を強く求めた。
- ジェネリック医薬品の科学的検証めぐり討論‐日本臨床薬理学会
2006年12月06日
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