全国の薬科大学・薬学部卒業生の就職先は、1999年から薬局(勤務・開設等)がトップとなっているが、2007年3月もこの傾向が続き、薬局への就職者は前年より0・8ポイント増の28・1%となり、トップを続けている。薬学教育協議会がまとめた07年「薬科大学卒業生・大学院修了者就職動向調査」で明らかになった。一方、病院薬剤部への就職も前年より若干増加した。(表参照[PDF])
■初任給は3.6%増の23・8万円”男性の44%が「進学」
同協議会は毎年、全国の薬科大学・薬学部に依頼し、卒業生および大学院修士・博士課程修了者の就職動向と初任給を調査している。今回、回答を得たのは48大学(国立14校、公立3校、私立31校)。学部卒業生の調査を見ると、卒業生の数は全体で8954人(男3640人、女5314人)、設置主体別では国立1185人、公立363人、私立7406人。このうち、給与が判明したのは就職者全体の65・1%だった。
卒業生の主な進路は、[1]進学31・3%(前年28・9%)[2]薬局28・1%(27・3%)[3]病院診療所薬局15・0%(14・1%)[4]製薬会社7・1%(8・1%)[5]一般販売業5・1%(6・0%)[6]病院診療所研究生2・3%(1・9%)[7]衛生行政1・1%(0・9%)[8]大学0・6%(0・6%)[9]卸売販売業0・6%(0・5%)――となっている。「就職せず」と「未定」は、合わせて6・0%だった。
これを男女別に見ると、女子は薬局が最も多く31・5%、次いで進学22・5%、病院診療所薬局19・2%、企業7・0%(うち営業5・0%)、一般販売業4・9%、病院診療所研究生3・1%など。男子は進学が44・1%で最も多く、次いで薬局23・1%、病院診療所薬局8・8%、企業7・0%(うち営業6・2%)、一般販売業5・4%、病院診療所研究生1・0%と続いている。
また、国公私立の別に見ると、いずれも進学、薬局、病院診療所薬局がトップ3。国立は進学が76・6%と圧倒的に多く、薬局7・9%、病院診療所4・3%。公立も同様の傾向で、61・2%と約6割が進学し、薬局11・3%、病院診療所11・0%と続く。それに対し私立の場合は、第1位が薬局で、3割を超えて32・1%に達し、次が進学の22・5%、病院診療所の16・9%と続く。
さらに、国公私立別と男女別を組み合わせると、国立の男子では進学が83・3%で前年に続き8割を超えた。また私立女子の場合は、薬局が34・4%、病院診療所薬局勤務も20・5%で2割を超えた。
初任給調査の結果では、平均は約23・8万円で前年の23・2万円に比べ0・6万円、率にして3・6%増加した。このうち薬局は24・5万円で前年と同額、病院は21・6万円で前年と同程度であった。一般販売業は約28・0万円で前年(25・7万円)より2・3万円増加した。
初任給が30万円を超えるものは、96098年は0・4%程度だったが、年々増加して前々年は9・8%に達した。しかし、前年は減少して7・8%、今回はさらに減少して6・6%となった。一般販売業は前年とほぼ同程度で、30万円を超える薬局・一般販売業が減少傾向にある。
■“厳しい”将来展望
同調査のまとめでは、「6年制薬科大学入学定員と将来の就職への展望」に言及し、06年度から6年制となった中で、今年度の薬局への就職は2513人、病院薬剤部への就職は1341人で、合計3854人とした上で、89年から07年までの就職動向から薬局、病院薬剤部への就職については現在以上の増加は期待できないと指摘している。製薬企業への就職は631人で、その他の部門への就職はさらに少ないという点も挙げている。
最近数年間の薬科大学卒業生の薬剤師としての就職に関しては、年間で薬局に230002600人、病院薬剤部に120001400人、製薬企業に5000600人の合計400004600人であると推測。新設大学を含めて06年度67大学の総入学定員数は1万1200人で、さらに506大学が増えれば「1万400001万5000人になるであろう」として、「新設大学が増加したため6年制の卒業生の就職はかなり厳しい状況になるであろう」との見通しを示している。
■大学院修了者、病薬への就職者が増加”企業への就職は横ばい
一方、大学院修士・博士課程修了者の就職動向を見ると、製薬企業(営業・学術、研究開発)への就職は、国立大学で95年の45・7%から39・1%(472人)に減少し、私立大学では89年の64・2%から26・9%(328人)へと激減している。この点に関しては、大学院の定員が大幅に増加した結果、相対的に製薬企業への就職率が減少してきたためと分析。就職者の実数は、国公立大学が3500500人、私立大学が2500350人の間で推移しているという。
病院薬剤部、薬局への就職については、00002年にやや停滞気味の時期があったが、03年より増加し、今回は国公立大学が病院薬剤部に164人、薬局へ59人、私立大学では病薬へ400人、薬局へ120人が就職した。この傾向は、医療薬学系大学院が増設され、製薬企業より薬剤師の仕事を志向する学生が増加してきたためと推測している。また、受け入れ側の病院薬局も、大学院修了者を積極的に採用し始めたことも影響していると考えられている。
- 【薬学教育協議会】06年就職動向調査‐約3割の卒業者が薬局勤務
2007年01月31日