■海外展開企業の好調続く
製薬企業の2008年3月期中間決算が出揃い、日本製薬工業協会がその概況を取りまとめた。今年は薬価改定がないことから、上位14社(中外製薬は6月中間、久光製薬は8月中間決算)でみると、営業利益で12社が増益となるなど、全般的に好調な決算が続いている。また、武田薬品などグローバル化が進む上位4社は、海外売上高が比率が上昇、海外依存度の高い企業ほど業績の好調さが際立っている。通期でも増収を見込む企業が12社あるなど、下期も好調な業績が続く見通しだ。
今中間期は、薬価改定がなかったことなどを理由に、売上高は12社が増収だった。
このうち、上位4社に限ってみると、武田薬品は糖尿病治療薬「アクトス」、アステラス製薬は免疫抑制剤「プログラフ」、第一三共は高血圧治療薬「オルメテック」、エーザイは抗アルツハイマー型認知症薬「アリセプト」といったグローバル製品がいずれも好調に推移し、業績にも大きく寄与した。
特に、エーザイは海外売り上げ比率が6割、武田薬品やアステラス製薬も5割台に達するなど、海外事業の貢献度が一段と濃くなっている。
上位4社の中で、唯一売上高が減収となった第一三共は、欧米子会社の決算期変更の影響などの特殊要因が理由となっている。これを除くと、結果的には増収増益といえる。第一三共も、米国を中心とした海外事業が業績に貢献しつつある。
その他の企業を見てみると、大日本住友製薬は高血圧症・狭心症治療薬「アムロジン」、三菱ウェルファーマは抗血小板薬「アンプラーグ」、田辺製薬は抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「レミケード」、塩野義製薬は高脂血症治療薬「クレストール」といった主力製品が順調に推移し、増収を確保。一方、大正製薬は、主力の「クラリス」が、前期に小児用ドライシロップ製剤改良品を発売した反動などで減収となったほか、主力の一般用医薬品事業も減収を余儀なくされた。
また、小野薬品、参天製薬は増収ながら、販売費及び一般管理費の増加で営業減益となった。
全般的に好決算となった製薬企業だが、上位4社を見れば分かるように、海外事業の貢献度が高い企業ほど好業績を残す傾向が、今決算からも見てとれる。ただ、課題はそれをどう維持していくかだ。
例えば、武田薬品は中間決算発表前、将来の主力品と見込まれている高脂血症治療薬「TAK‐475」について、FDAから追加試験の実施を求められ承認申請を延期すると発表。また、エーザイも中間決算発表時に、開発を進めている抗パーキンソン病薬の承認申請が遅れることを明らかにした。各社ともこうした事態は十分起こり得るものだ。
今後、好調な業績を維持するには、こうした点を視野に入れた事業戦略が不可欠だといえそうだ。
なお、通期業績では第一三共は減収を見込むものの、大半は増収を見込んでおり、引き続き好調な業績が続くと見ている。
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