NPO法人大阪専門医治験医療ネット(正岡徹理事長)が今年6月に発足、年内にも数病院で合計30症例規模の治験を開始する見通しだ。同ネットは大学や医師会主導ではない独立性の高い組織。大阪府下の公立病院や公的病院を中心に、地域医療の基幹を担う約20病院が参画している。患者数が多い基幹病院での治験実施体制を整備し、各病院の専門医の連携を推進する。将来は同ネットを通じて年間1000症例ほどを実施できる体制にしたいという。来春にはセントラルIRBを稼働させる計画だ。
診療所での治験は全国的に拡大しているが、地域の基幹病院での治験は立ち遅れ、特に関西ではその傾向が強かった。また、各地の診療所で分散して治験を実施するよりも、少数施設で多数症例が実施できれば効率的で質も高まると見込まれるため、その体制整備が製薬会社側から望まれていた。赤字体質が続く病院側にとっても、治験は収入の柱として期待できる。
こうした背景のもと正岡徹氏(大阪府立成人病センター顧問)ら有志が集まり、関西の中堅SMOの支援を受けながら、基幹病院の組織化を進めてきた。各病院の院長に声を掛け勉強会を開催。そこで賛同を得た病院を中心に今回、同ネットが発足したという。
同ネットの主な役割は、製薬会社と病院を仲介することだ。製薬会社の治験案件を把握し、病院側に紹介する。製薬会社には、患者数や治験実施体制の整備状況など病院側の情報を提供。それをもとに製薬会社が治験実施施設を選定し、両者が契約を交わして治験が開始される。
治験は、領域ごとに横断的にグループ化された各病院の専門医が行うため、多数の症例をこなせるだけでなく、質の向上も期待できる。糖尿病、高血圧、精神科、アレルギー、消化器、泌尿器などの領域でグループが形成される予定だ。さらに、CRCの確保、治験事務局の整備など、外部のSMOが必要に応じて支援し、基幹病院の治験実施体制を充実させる方針だ。
同ネットは、製薬会社の治験案件、病院情報の把握を一通り終えた。それを受け、まずは小規模の生活習慣病領域の治験が年内にも開始される見通し。
来春の稼働を目指すセントラルIRBも同ネットの目玉になりそうだ。既存のIRBにありがちな、[1]審議が十分でない[2]定期的に開催されない――などの課題を踏まえ、実質的な審議が可能な人材をメンバーに選定するという。