ツムラの芳井順一社長は、都内で開催した中間決算説明会で、「われわれが取り組まなければならない最大の課題が薬価だ」と述べ、来年度以降の薬価改定で漢方管理ゾーンの導入を目指していく考えを強調。「医療用漢方製剤の薬価はツムラの命」と“保険外し”への危機感を露わにした。
医学部における漢方医学教育の充実、漢方外来数の増加など、漢方製剤を見直す機運が高まってきた。実際、ツムラの医療用漢方製剤の実売実績をみると、薬価ベースで2005年度が62億8000万円、06年度64億6000万円、07年度は67億5900万円と好調に推移している。ツムラの医療用漢方製剤に占めるシェアも、99年度は70.1%だったのに比べ、07年度には82.4%と大きく伸ばしている。
一方、8月に厚生労働省が発表した「新医薬品産業ビジョン」の将来像に、新たに「ベーシックドラッグファーマ」のカテゴリーが設けられた。その中では、漢方製剤などについて、質の良い製品を安定的に供給していけるような企業体質の強化を求めている。
これについて芳井社長は、「ベーシックドラッグファーマに位置づけられたことは画期的な出来事で、漢方製剤が治療薬として公式に認められたということだ」と高く評価した。
しかし、これまで2年に1回の薬価改定ごとに、再三、医療用漢方製剤の“保険外し”が議論の俎上に挙がってきた。そのため、日本漢方生薬製剤協会は、薬価制度改革案として、漢方製剤・生薬の品質や供給等の安定を図るための「漢方管理ゾーン」の設定を提言している。これは、市場実勢価格加重平均値が6%以内の場合には、調整幅2%に4%の漢方管理ゾーンが適用されて、薬価引き下げは行わないというもの。
芳井社長は、「漢方管理ゾーンの導入は来年度の薬価改定には間に合わない」とした上で、「薬価問題に真剣に取り組み、われわれの主張する提言が認められてこそ、質の高い製品を安定供給できるベーシックドラッグファーマとしての役割を果たせる」と強調し、今後薬価問題に全力を尽くしていく考えを示した。