原因不明で治療法も確立していない潰瘍性大腸炎(UC)の発症に Fusobacterium variumという細菌が関与している可能性が強いことが、国立京都国際会館で開かれた第54回日本化学療法学会で、大草敏史氏(順天堂大学医学部消化器内科)から報告された。F. variumに効果があると見込まれた3剤の抗菌剤を組合せてUC患者に投与したところ、症状や内視鏡像の改善、再発の抑制が認められたという。炎症を抑制する従来の治療法に対し、この治療法は根治的な方法になる可能性があるとしている。
大草氏らは、F. variumに対して低濃度で効果を示す抗菌薬を検索、良好な結果を示した3剤の抗菌剤を組み合わせた「ATM療法」を考案した。
ATM療法は、アモキシシリン、テトラサイクリン、メトロニダゾールを経口で2週間投与するもの。実際に、10人のUC患者にATM療法を実施し、10人の非実施群と比較したところ、ATM療法群では症状、内視鏡所見、病理所見の改善が認められた。さらに、12カ月間の経過を追跡したところ、非実施群では10人中5人がUCを再発したのに対し、ATM療法群では10人中1人しかUCが再発せず、同療法には再発を抑制する効果があることも確認できたという。
大草氏は、「抗菌剤を多剤併用する療法は、今までの免疫抑制剤による治療に比べて有用性が高く、UCに対する新しい治療になるのではないか。今までの治療は炎症をなんとかするという(対症療法的な)ものだが、それに対してこの療法は根本的な治療に近い」と話した。