薬物乱用防止にはインターネット対策の強化が必要――内閣府がこのほど公表した「薬物乱用対策に関する世論調査」では、多くそう認識していることが分かった。新しい合成麻薬のMDMAやMDAなどの認知度も低く、普及啓発活動の充実が望まれる結果だった。
調査は、薬物乱用対策に関する国民の意識を知るため、15歳以上の5000人を対象に、全国で今年1月に面接聴取の形で実施されたもの。有効回答数は2623人(回答率52.5%)であった。覚せい剤や薬物乱用に関する内閣府の世論調査としては6回目になる。
乱用が問題となっている薬物の周知度は、[1]覚せい剤(エス、スピード、シャブ)が88.9%[2]シンナー87.6%[3]コカイン81.1%[4]ヘロイン80.3%[5]アヘン76.4%――と、以前から知られている薬物が上位を占めた。
それに対し、新しい合成麻薬であるMDMA(エクスタシー)は25.1%、MDA(ラブドラッグ)12.4%、5-Me-DIPT(ゴメオ)は2.4%と、まだ認知度が低く、啓発の課題として浮かび上がった。ただ、MDMAに関しては15~19歳未満で3割、20~30歳代が4割、40歳代でも3割強の認知度があり、合成麻薬に関しては、若い世代で周知度の高い傾向がうかがわれた。
覚せい剤を知っていると答えた2291人のうち、98.3%と大半が「恐ろしいものだ」と捉えている。その理由(重複回答)として、「中毒で心や体が蝕まれる」が約9割、「1回でも使うと止められない」が約7割、「乱用者が殺人・窃盗・暴行などの二次犯罪を起こす」「犯罪に巻き込まれる」などが6割程度だった。
同様にMDMAを知っているとした658人でも、87.4%が「恐ろしいもの」と思っていた。その理由も覚せい剤と同様、「中毒で心や体が蝕まれる」「1回でも使うと止められない」が多い。新しい合成麻薬それ自体を知っている人は少ないが、知っている人は恐ろしさについて、従来の覚せい剤と同程度の認識を持っていることが明らかになった。
一方、7割を超える人が「薬物犯罪が悪化している」と考えており、その要因としては「繁華街やインターネットで密売されるなど、薬物入手が容易になった」「薬物の密輸入が増加した」「乱用される薬物が多様化した」などを挙げた人が多かった。また、青少年の薬物問題が「深刻だ」とする人は9割を超え、特にインターネットや携帯電話の普及を問題視する意見が多く見られた。
薬物乱用防止に向けて政府に望む対策としても、▽密売人の取り締まり強化▽密輸入の取り締まり強化――などに加え、▽インターネットや携帯電話による密売の取り締まり強化――を挙げた人が目立った。